海外学校関係者の方
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在外教育施設事務長会議 2015年度開催内容 講演B<8月7日(金) 10:30-12:00>
テーマ・・・「在外教育施設における安全対策」
講師・・・桜井俊之氏 (セコム株式会社 ALL SECOM推進部 担当部長)
<プロフィール>1984年にセコム鞄社。緊急対処員を経験後、米国に社費留学。1988年より海外向けシステムの開発や技術・業務指導を担当。2004年からインドネシア現地法人副社長。ジャカルタ・ジャパンクラブ邦人安全対策連絡協議会メンバー。当時多発したテロをきっかけに現地の日本語メディアへ防犯・テロ対策の記事を連載。2010年からグループ国際事業本部 技術部長。上海分室・シンガポール分室を管轄し、膨大な犯行事例を収集。また、イスラエルで開催されたテロ対策国際会議に、米国連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省(DHS)専門官などと共に参加、世界最高水準のテロ対策についての指南を受ける。2013年からグループ国際事業本部 営業部長を兼務。中国・東南アジア特有の犯罪の実情、テロ対策などについて講演多数。2014年から現職。「セコム海外赴任者パッケージ」を企画・発売。著書に『企業の護身術』(2008年、NNAインドネシア社)、作成メンバーとして『海外派遣者ハンドブック(インドネシア編)』(2013年、日本在外企業協会)に寄稿。
◆はじめに(セコムグループの国際事業現況)
◆日本の犯罪状況
◆海外の犯罪状況
◆まとめ(海外の学校での総合セキュリティ対策)
◆質疑応答
・ | 1978年に台湾への事業展開を皮切りに、現在、アジアを中心に12の国・地域でセキュリティサービスを提供。 |
・ | セキュリティのみならず、防災、メディカル、保険、不動産、情報通信、地理情報提供等の事業を融合させた「ALL SECOM」というコンセプトでサービスを国内で展開しており、現在海外にも拡大中。 |
・ | 学校や幼稚園における刑法犯の認知件数、多いのは窃盗や器物損壊。2002〜3年をピークに減少傾向にあるが、詐欺等の知能犯や風俗犯は増えている。 |
・ | 未就学児の被害で多いのは暴行・傷害やわいせつ。小中学生になると窃盗の被害が急増。 |
・ | セコムでは主に人と機械を融合した警備を行っているが、重大な事件が発生するたびに新しい警備システムを導入してきた。機械によるサービスは人件費がかからないところがメリットだが、人にしかできないサービスもあり、警備の内容を見て使い分けていくことが大切。 |
@内部犯行
・ | アジア地域では盗難事件の半数以上を「内部犯行」(従業員や守衛、取引業者による犯行)が占めている。 |
・ | 内部犯行の普遍法則は、回を重ねるごとに、罪の意識は薄くなり、量は増え、インターバルは短くなっていく。そして最後には「やらなきゃ損!」という心理状態になっていく。 |
・ | 内部犯行の発展ステップは、個人犯行→グループ犯行→外部組織との結合→組織の完成(社内の要所が組織メンバーで固められ、社長のコントロールも不能となる)。 |
・ | 内部犯行の対策大原則は「早期発見」「早期摘発」「徹底根治」であり、「これくらいは大目に」といった性善説はだめ。まずは、社長がセキュリティに関心を持っていることを行動で示し(警備員に頻繁に声をかける等)、処罰は厳格に行うほか、在庫管理の徹底、牽制や記録・監視システムの導入、また工場の責任者の職務記述に「セキュリティ責任」の一文を加える。ただし、雇用契約後に新たに加えるとなると面倒な事態になることも考えられるため、雇用時に契約を交わせると良い。 |
・ | 内部犯行の背景には「貧困問題」「教育課程の道徳教育欠如」「蔓延する汚職」「公共福祉・年金制度の未整備」「警察官の絶対数不足」「泥棒市場の存在」「宗教的な助け合い精神」「戸籍、犯歴データベースの未整備」「愛社精神の欠如」「植民地時代の負の遺産」が挙げられる。 |
Aテロ/破壊行為/銃乱射など
・ | テロの一般的な定義は「政治的目的を達成するために、暗殺・暴行・粛清・破壊活動など直接的な暴力やその脅威に訴える主義」。 |
・ | テロの特徴は、従来のセキュリティの概念が通用せず、攻撃開始の明確な「日」がなく、社会システムを破壊することが目的であり、誰もが容疑者になり得るということ。 |
・ | テロ対策の基本は「動機を喪失させる」「情報と物理的セキュリティの2本立てで臨む」「妥協を排し、例外を一切認めない」。 |
・ | テロに使われることが多いのが爆発物。その探知方法としては「物理的サーチ(人によるチェック。各種探知機で反応した後の二次的チェックに有効)」「爆発物探知犬(においの追跡)」「金属探知機(刀剣や拳銃の探知に有効)」「X線探知機(薄いプラスチック爆弾の発見は困難)」「トレース感知器(微量の粒子や成分にも反応、確実性が高い)」などがある。 |
・ | アメリカ大使館など欧米の施設は安全性を最優先に考えて居を構えるが、逆にターゲットになる確率が高いため要注意。 |
・ | 具体的なテロ対策として、「道路と敷地の間に段差を設ける」「車両のバンパーの高さまでコンクリート製の基礎で固め、その上に強度のある外周フェンスを設置」「T字路の突き当たりに入口を造らない」「敷地内に通じるゲートは最小限に」「見晴らしを良くするために葉をつける植栽は植えない」「夜間は影ができやすい強力な白色ハロゲン照明を点灯する」など。 |
B脅迫・誘拐・監禁
・ | 脅迫行為は解雇した元従業員、運転手、使用人あるいはその関係者が実行しているケースが多い。 |
・ | 脅迫を受けたら、警察に届け出て、周囲に注意を払い、日常の生活パターンを変える。運転手から情報が漏れることも多いため気をつけること。また、家族への脅迫があった場合は一時帰国させる等の措置も必要。 |
・ | 誘拐や監禁の目的には、政治的、営利、嫌がらせ、仕返しなどがある。 |
・ | 誘拐対策として、「常に警戒心を持つ」「行動パターンを読まれない」「スキを見せない」「人目のない場所は避ける」「車両のチェック」「広大な駐車場では端にとめない」「走行中は車間距離をとる」「行き先は必ず誰かに伝えておく」。 |
C変わった侵入手口
・ | 「入り待ち(日中入場し、夜間無人になってから犯行)」「下がり蜘蛛(屋上から下層階に侵入)」「焼き破り(ガラスをライター等であぶり、ある物を使用して無音で破る)」「排水溝からの侵入」「換気扇を外しての侵入」「レンガをくりぬいての侵入」「トタン壁をめくりあげての侵入」などがある。 |
・ | 「最高のセキュリティ」は人(機動力+判断力)と機械(連続性&安定した正確な監視)の合わせ技にある。 |
@基本の対策
「施設特性の調査」「学校内・地域・周辺のリスクの洗い出し」「来校目的別にアクセスできるエリアや動線・チェック手段の明確化」「リスクに対する重要度の設定」「セキュリティポリシーの策定」「具体的な計画立案・マニュアル化・周知徹底」「定期的訓練(1学期に1回はしてほしい)等での全員のセキュリティ意識の維持」などをしっかりと。
A日本とは異なる諸事情 |
終身雇用でないため人の入れ替わりが激しい。(入場許可証等の管理をしっかり)。 | |
・ | 善悪の判断基準が個人により異なる(「性悪説」「最悪のシナリオ」をベースに考えること)。 |
・ | 混成国家であることを認識する(対立を生まないような配慮、「個」への柔軟な対応が必要)。 |
・ | 警察官であっても信用できないことがある。 |
・ | 宗教上の「助け合いの精神」が犯行を助けるケースも。 |
・ | 正当な理由があっても従業員の解雇が難しい地域が多い。 |
・ | 機器メンテナンスの意識が希薄(定期点検には立ち会おう)。 |
B学校ならではの対策
・ | 納品業者などは登下校の時間帯には入出場禁止とする。 |
・ | 監視カメラは特別教室およびプール、校庭に優先的に設置。 |
・ | 出入管理システムは特定の教職員のみ入れる部屋を優先的に設置。重要・高価なものがある部屋は入場のみならず出場の資格チェックも行う。 |
・ | 緊急事態に備え、3日程度の非常食や飲料水、懐中電灯、予備電池、医薬品、マスク等を備蓄しておく。 |
・ | 保護者への緊急連絡網を通信手段含めて整備しておく。 |
・ | サイバーセキュリティ対策、個人情報漏洩対策、AED配備も念頭に入れる。 |
Cスクールバスにおける対策
・ | 窓ガラスには飛散防止フィルムを貼る。 |
・ | 車内に飲料水や食料、応急トイレ等を備えておく。 |
・ | 2種類の通信手段を持ち、GPSロケーションシステムがあればなお良い。 |
・ | 所定の停車場所以外では運転手以外は絶対に降車しない。 |
・ | 運転手の免許資格をチェックする。 |
・ | 運転手に車両のチェックをさせ、日本人も再チェックを行う。 |
・ | 送迎ルートを数種類準備してランダムに使い分ける。 |
・ | 移動中に不自然な通行止めや迂回路がある場合は学校の運行責任者に確認する。 |
・ | 運転手に定期的に健康診断を受けさせるほか、毎回、出発前に点呼を行い、顔色をチェック(飲酒していないか等)。 |
● | 質疑応答 |
Q1 | 教室内に監視カメラを入れた実績はあるか。 ⇒学校の教室に入れたことはないが、会社の中に入れたことはある。その際、導入理由の説明が難しかった。「監視ではなく、皆さんの潔白を証明するためのもの」という感じで話をした。教室内に設置するのではなく、入口を廊下から撮るという方法もある。 |
Q2 | ダミーのカメラの効果は? ⇒ダミーだと見破られなければ高い効果が見込める。そのため、外から見て気づかれないようにできているも の(配線まであるもの)を用意する。ダミーカメラであるという情報は日本人だけで共有することが大切(現地スタッフは自慢げに暴露してしまう可能性が高い)。ダミー云々ではなく、その運用の仕方がカギになる。 |
Q3 |
警備に、人と機械の両方が必要か。 |
以上