海外学校関係者の方

在外教育施設事務長会議 2015年度開催内容 分科会@A-補習授業校<8月6日(木) @13:30-15:00 @15:10-16:40>

講演の内容を受け、学校・規模別の4グループにわかれて協議

◆事務の合理化・事務局・事務長・事務職員<
◆参加校各校の理事会・運営委員会の体制
◆教職員等
◆現地校(校舎貸主)との関係性
◆学校運営の現状と困っていること
◆給与等
◆ボランティア等
◆年金制度
◆デジタル教科書の問題

参加校各校の理事会・運営委員会の体制

  • 理事は15名(100%保護者)。校長は理事ではなく、オブザーバーとして理事会に出席(教育の専門家として助言を行うという立場)。事務長は理事として運営に携わる(理事会と校長がうまくいくよう、橋渡しの役割)。理事は選挙で選出。任期は1年(再任可。上限3年。継続性の観点から、任期を長くすることも検討したが、色々な意見を反映できるよう、1年×3を上限としている)。事務長以外の理事はボランティア(無償)。理事会は年に6回。事前に役員会で課題を整理。
  • 運営委員は10名(企業から3名、在外公館から1名、日本人会から1名、校長等)。職員会議には、教職員全員(教員だけでなく事務職員も)出席のため、互いに「知らなかった」ということがなく、うまく回っている。
  • 理事・運営委員は企業から派遣(家庭数トップ5が理事、6〜15が運営委員を出す)。任期は1年のため、諸々の説明を毎年繰り返し行わなければならない。
  • 理事は日本人会から派遣。校長・領事・事務長もオブザーバーとして参加。理事会は経営問題のみ(事務的な懸案事項は事務長と校長で解決)となっているが、教員の人事に関する理事会の関与の度合いについて疑問を感じることもある。

教職員等

  • 学級担任や常勤事務職員の中には保護者もいるが、守秘義務の遵守を徹底しており、問題はない。謝金は12:30〜16:30の4時間分を基本としており、残業や早出による時間外労働については、その分の謝金を+αで支給。
  • 児童生徒数の年間6%増に伴い、学級数も増加していることから、講師については帰国による欠員補充に加え、新規に3〜4人必要。優秀な人材確保が課題。
  • 教科担任制※の導入を検討中。これにより教員の負担軽減、指導力向上、自信向上を図れれば、児童生徒へのメリットにも繋がる。(※各教師がそれぞれ特定の教科を分担し、教科毎に別の教師が指導を担当する方式)
  • 学級担任が全教科の指導を担当する学級担任制と比べて、教科担任制は、児童生徒にとって、教員間の力量差による不公平感や教員と児童生徒間の相性の問題による不満等の軽減という効果もある。
  • 以前は教科担任制をとっていたが、教員間の負担の差が問題となり、廃止した。(教科によって、準備や指導の負担感が異なる)
  • 法的要請(最低賃金額の変更)により、給与を上げなければならず、財政圧迫。
  • 給与を上げても人員不足。
  • 授業時間以外でも、校舎の見回りや保護者対応など、教員は忙しい。
  • 労働意識調査を実施したところ、給与を仕事量が上回っているとの回答が目立った。
  • 教材研究の時間も必要であるが、その時間を給与上どのように取扱うかが問題。(「1か月につき、一律1時間分を支給」「申告制だが、1か月につき7時間を上限とする」など)
  • 宿題のチェックなど、契約上の勤務時間ではカバーしきれない分については、休み時間や自宅への持ち帰りで対応してもらっている部分もある。
  • 教師と学校の関係が良好なうちは、給与が支払われない分についても“ボランティア”で対応してくれるが、ひとたび関係が悪化すると、その分を“未払い賃金”として追徴金と共に請求されるおそれがある。そうなれば、財政は破綻し、補習授業校は存続できなくなるという事態にもなりうる。

現地校(校舎貸主)との関係性

  • 現地校とはフレンドリーな関係だが、保護者からの要望が多く、調整が難しい(もともと、かなり好条件で受け入れてもらっているところ、新たな要求を行うことにより、全体的な条件の見直しをされるなどの薮蛇となりかねない)。
  • 現地校の教員を2週間程度日本に派遣することにより、現地校の教員が日本の教育環境を理解し、また、言葉の通じない異国の地で生活することの苦労を体験した結果、現地校に通う日本人の子どもへの態度が変わるということがある。
  • クリスマスギフトを贈る(お金があれば書籍を購入できる金券等。なければ手作りのプレゼントで気持ちを伝える)。
  • コミュニケーションホルダーを各教室に設置することにより、現地校の教員と補習授業校の教員とが互いに伝えたいことを適宜伝えられるようにしている。
  • “face-to-face”を心がけ、問題があればすぐに駆けつけるようにし、トラブルが大きくならないうちに解決する。
  • 年度初めに、借りる教室の担任と決め事(例えば、ホワイトボードについて「消さないでほしいところには“save”と明記。“save”と無ければ、消して良い。全体的に“save”というのはなしとし、使えるスペースも必ず作っておく。補習授業校側でも、予備のホワイトボードは準備しておく」など)をしておくことにより、互いに不満が生じないようにしている。
  • 教室にチェックリスト(「土曜の授業に必要なものリスト」「(紛失・破損不可の)備品リスト」など)を置いておくことにより、「補習授業校の授業に必要なものがない」「現地校の大切なものを紛失した」といったトラブルを防いでいる。
  • 教室の「使用前」「使用後」の写真を撮っておくことにより、「高価な備品を無くされた」などと言われるトラブルを防いでいる。

学校運営の現状と困っていること

  • 児童生徒数の減少により派遣校長はあと1年と決まってはいたが、急遽帰国してしまった。帰任予定ではなかったため引継ぎも十分にできず、校長派遣中止後の体制計画もできていないまま校長代行の業務が加わり、火急に体制基盤を固めていく必要がある。
  • 決定は理事会で行うが、案件は理事長・副理事長。事務長で練ってから、理事会に持っていくようにしている。保護者からはくじ引きでPTA役員になって参加しているので、運営はスムーズに行っている。
  • 決定機関は運営委員会になる、大手進出企業から理事を選出し、領事も出席し月1回運営委員会を開催している。大きな決定をするときは領事に出席してもらう。
  • 3校を1校に統合するなど大きな決定をするときは保護者を交え総会を年2回行った。在外公館から分離した学校だがそれぞれカラーの違いが在り過ぎた。5年前から校舎を探したが、駐車場の確保と800人収容できる校舎でIT環境も充実した学校をやっとの思いで見つけ、今年4月に統合できた。
  • 商工会はバブル以降縮小しているものの、お金があるので安定した学校運営が継続している。まとめる先生がいなかったので文部科学省に派遣申請をしているが、抵抗もあるようだ。
  • 現在の事務局員は仕事を言わないとしないので問題がある。事務長の適任者がいないので公募している。
  • 事務に対して、対処を厳しくする必要があるが、女性同士・年齢も近いと難しいときがある。
  • 校務分掌と職務決裁権を明確化している。校長の着任時には、校務内容にサインしてもらっている。
  • 一般的な補習授業校の組織形態を学ばずに赴任してくる派遣教員が見受けられる。日本国内の公立学校と同じように、校長が組織の長と思っているようで、文部科学省での研修内容にもそれが含まれていないとのこと。
  • 校舎を1校にまとまったことのメリット・デメリット。分かれていたことにより経費のロスがあった。まとまったことにより先生間で難しいところもあるが、派遣校長の申請ができる。
  • 統合の結果、児童生徒は友達が増えて楽しいと言っており、保護者は送り迎えが大変だが、子どものためと思ってくれている。大量の図書の整理が大変だが、使っていない部屋を借りて入れる予定。
  • 校舎借料が上がってきたので来年から授業料の値上げを予定している。
  • 勉強についていけなくなり、3年生から4年生になるときにやめて行く子どもが多かった。
  • 先生の負担があるがクラスを分けるのではなくクラスの中で、例えば国語は、手の込んだ作文を書くグループと、先生の指示に従って(基本ルールに従って)書くグループに分けて授業を行うようにした。発言ができるようになって学校に喜んでいくようになったと評価されている。前向きに考え今年も実施する予定。
  • 来年から完全に教科制をやめる予定。クラスが増えてきたため保護者も理解している。
  • 児童生徒が増加し、ウェイティングも出ている。帰国子女が入学できない現状があり、早急の解決策が必要である。
  • 児童生徒が増加しており校舎はリミットに近いため、入学に優先順をつけている。商工会会員を優先的に受け入れ。次に、数年後に帰国を予定している者、商工会会員の永住者。最後にそれ以外になる。一時的に1クラス25名を超えても受け入れている。低学年にはアシスタントを入れている。
  • 児童生徒の減少により、経費節減、学校の行事の在り方、高等部を継続するかの問題がある。
  • 運営委員会は保護者で運営しているが、決まらなかったりぶれたりする。永住者比率が増え、学力の差もあり、保護者の協力する姿勢が少なくなっている。
  • ドレスコードも問題になる。誓約書・願書に違反しているとして児童生徒に注意する。注意でだめな場合は、文書で通達をする。退学もある。注意は校長がすべき。

給与等

  • 給与体系は、時限給と調節給(教科手当)で、残業代を含む。
  • 時給を高くしているので、年間で残業込みで支払っている。勤続年数ベースや手当てなどで差をつけている。
  • 1クラス25名を超えた場合は、時給の割り増しとクラスアシスタントを入れる対応をした。
  • 5、6年前に給料を上げたが不満が出て困っている。適正時給を検証したが倍に上げないと適正にならない。
  • 物価上昇率から試算して、運営委員会で決めている。
  • 8年間上げていないが、授業料の値上げをしないとアップは無理。人件費を抑えるために労働時間を抑えるなどしてぎりぎりまで我慢する。

ボランティア等

  • 安全当番はPTAのボランティアでやっている。ボランティアは入学時に誓約書にサインしてもらっている。
  • 誓約書になかなかサインしない場合もあり、サインしても無断欠席でてこずっている。
  • 保護者活動は、ボランティアではなく義務化しているが、嫌がって泣く人もいる。
  • 規模が小さいので、誰がということがわかってしまうので無断欠席などはない。
  • PTA役員は1年間大変だが、良かった事を発表するようにしている。
  • 図書館当番もボランティアでお願いしている。

年金制度

  • 10月から年金制度を取り入れなければならならない。対象者は選択制で、他に仕事を持っている場合はそこで入るかになるが、学校の持ち出しもあるため考えなければならない。
  • 労働時間により年金の種類があり、実施するかを選べるが、事務職だけが入ることにした。
  • 年金のオプションがあるが、浸透していないのでどうして良いかわからない。
  • 9月から開始。年間1,000時間以上勤務者が対象。対象者6人中4人が加入。学校の上乗せは3%である。
  • 対象者5名中3名加入。学校上乗せは2%である。
  • 全員が加入している。学校の支払いは9.5%であるが、来年は10.5%になる。
  • 年間3,500ドル以上の所得が対象で、本人5%、雇い主が5%の負担になる。一律例外なし。
  • 月額50ドル以上の所得者が対象で、8名加入している。

デジタル教科書の問題

  • 操作サポートに、午前中はIT関係に明るい保護者にボランティアで参加してもらっているが、その他にIT専門家に1日有料でお願いしている。ITボランティアでできないことを専門家にお願いしている。
  • 職員会議で、月1回1時間の操作トレーニングをしている。回を重ねた後にトラブルシューティングを作成したので、ある程度自分で解決できるようになっている。
  • IT関連の進出企業に協力してもらって導入したので、IT環境は充実している。
  • プロジェクターとPCを先生一人ひとりに配布。学校の鍵のかかるロッカーで管理し、カートもあり授業のときに楽に持ち出しができるようになっている。
  • 保管場所の確保が困難。自宅に持って帰るとウィルス感染が心配である。
  • デジタル教科書をインストールするためにブラウザのバージョンアップが必要な場合がある。借用教室のパソコンであるため、借用学校の担当者にお伺い・立ち会いなどお願いしなければならないなど簡単にできない。
  • コンピュータのスキルがある派遣校長で助かっている。
  • デジタル教科書に頼りすぎて先生の力が下がらないのか。張り紙程度にしか使わず使いこなしていないのではないか。

以上