海外子女教育ニュース

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二〇二二年度 第一回経営アドバイザリーコミッティーを開催(海外子女教育振興財団)(2022年7月号)2022.06.20

海外子女教育振興財団(JOES)は五月二十五日、本財団の綿引宏行理事長と浅原賢業務執行理事がホストとなり、JOESがステークホルダーにとってよりよい組織に進化していくために、今年度の第一回経営アドバイザリーコミッティーを開催した。
コミッティーのメンバーは昨年度から引き続き、東京大学大学院情報学環客員教授の辻村清行氏、環太平洋大学および国際大学IPU New Zealand学長の大橋節子氏、渋谷教育学園渋谷中学高等学校長の高際伊都子氏、ミネルバ大学元日本連絡事務所代表の山本秀樹氏。昨年度はオンラインで行ったため、今回が皆一堂に会した初めての会となった。
まず、綿引理事長がJOESの決算内容をはじめ、在外教育施設の現状や政府への働きかけ、および現在進めている「在外教育施設とのネットワーク強化」や「他団体との連携」、「JOES Davos Next」や「JOESシステム改革」等に関する説明を行い、メンバーのかたがたから意見をいただいた。
ICTに関する専門家でビジネスの世界でも豊富な経験を持つ辻村氏は「それぞれのプロジェクトを進めていくには具体的なデータの収集が重要。たとえば、在外教育施設の改革に取り組むためには、各学校のそれぞれの考慮すべき事情、実際にそこで暮らしている子どもの状況、保護者の考えなどを総合的にデータとして整理しておく必要がある。また、財団が取り組むべきプロジェクトや課題は幅広く多岐にわたるので、いつまでに何をどのように動いて、どこまで広げていくのかグランドデザインを整理し、優先順位をつけ絞って動いていくべきではないか」と指摘した。さらに「改革する対象が多い場合、その改革を広げていくためには、『成功事例』をつくることが大切だ」と述べた。
日本とニュージーランドの私立大学で学長を務め、グローバル教育に精通している大橋氏は、「コロナ禍でオンラインが普及し、学校や教育の可能性は広がってきている」と述べ、「個々の枠を緩め、きちんと調査したうえで他の組織とつながり、双方で成果を出していけたらいい」と話した。そして、「教員志望の学生が減ってきている」と現状を嘆き、「たとえば在外教育施設で学生の教育実習を拡大させ、インターンシップを可能にするなど、グローバルな視点での新たな取り組みを導入すれば、在外教育施設の魅力を上げ、教員志望者の増加にもひと役買えるかもしれない」と提案したほか、「在外教育施設の教員採用に新たなルートを考える場合、教員としての認定や研修制度を整える必要がある」と述べた。さらに「改革」する場合、それに要する時間を待てない人たちもいると指摘し、「とりあえずモデルケースにトライしていくという覚悟も必要」と背中を推した。
国内の私立中学校・高等学校の校長として広く教育に携わっている高際氏は、特に在外教育施設に関して「よかれと思って制度を整えることが、逆にその学校のカラーや自由度を奪ってしまったり、『学校』の枠から外されてしまったりすることにつながる場合もある。どこまでどのような切り口で求めていくのか、慎重に行う必要がある」と、制度改革を行う際のリスクについて述べたほか、統廃合に関しては「学校を閉じる場合、学校はすべての子どもの教育を担保し、最後のひとりを送り出すまで責任を持たなければならない。それだけの覚悟が必要」と力を込めた。また、幼児を連れて海外に行くケースが増えてきている点に関しては「最近は赴任期間が短い、もしくは子どもが小さいからあえてインターナショナルスクールを選ぶという人も少なくない」と話し、幼児教育を日本とオンラインでつないで行うなどの支援態勢も考えられると提案した。そして「帰国生は多様性を受け入れる雰囲気をつくってくれる存在。帰ってくる子どものフォローをしっかりすることは今後の日本の学校に欠かせない」と未来に明るく目を向けた。
小学生のころにフランスで現地校に通った経験を持ち、現在は「志を持つ人が、自分の夢に向かって、学べる環境を創る」というドリームプロジェクトスクールを主宰し、大学や高等学校で顧問や講師を務めている山本氏は、「国際結婚をして、現在子育て中の身内がいるが、子どもが帰国後、帰国生受入校に入ったものの、日本語が十分に話せない生徒に対するサポートがなく困っていた。海外への赴任前や赴任中のほか、帰国する際や帰ってきてからのサポートを手厚くすることをも考えてほしい」と要望した。さらに海外実習生を含め日本で働く外国人の子どもたちについても関心を寄せ、「彼らを置き去りにしてはいけない。外国人労働者に関しては企業のニーズがあるのに、その受け入れ体制が整っていない。彼らの子どもたちに日本的な心、日本の文化を身につけてもらえれば、将来の日本に返ってくる」と話し、海外子女教育・帰国子女教育の枠を広げての取り組みが今後の日本をつくっていく一端になるのではないかと述べた。
今年度内に第二回のアドバイザリーコミッティーの開催が予定されている。

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