海外子女教育ニュース

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在外教育施設における教育の振興に関する法律が成立─「海外子女教育」の振興が大きく前進─(2022年7月号)2022.06.20

在外教育施設での教育のいっそうの充実を国の責務とした法律が参議院本会議で可決され、成立した。
在外教育施設への支援をめぐってはこれまで根拠となる法律がなかった。これを踏まえ、このたび成立した在外教育施設における教育の振興に関する法律は、海外に住む日本人の子どもの教育に万全を期すことや、国内の教育施設と同じ水準を確保することを基本理念としている。
異質な環境のなかで、異なった考え方の人たちと共に対等に渡り合える人材、また異郷から「日本」を見ることのできる海外子女の可能性を最大限伸ばしていくことは、今後の日本の発展を考えれば必須である。
このたびの法制化は、将来の日本や世界のリーダーになり得る海外子女の学びを飛躍させる大きな第一歩となる。
遡れば一九六〇年代、日本企業の国際化が始まり、海外における子どもの教育や帰国子女の受け入れに関する問題が表面化しはじめた。
海外駐在員にとって子どもの教育は大問題。官民の「海外において日本語での教育を行うという事業を進めるには、一官庁、一企業だけでは実現できない巨大な問題である」という一致した意見のもと、海外子女教育振興財団が設立されてから五十一年がたつ。
その間、産学官民が手を取り合い、海外子女教育の振興のために力を注いできたが、官民の努力だけでは解決が困難な課題もある。
そこで、在外教育施設における教育の支援にかかわる法律成立を目指し、表立ってスタートが切られたのは二〇一三年十月三十一日。
「海外子女教育推進議員連盟」(現・在外教育推進議員連盟)が設立され、自民党に所属する国会議員二十八人が入会。田野瀬太道衆議院議員が事務局長となり、会長には遠藤利明衆議院議員が選出された(現在も共に在任)。
「グローバル人材育成のためには海外子女への教育が非常に重要である」として憲法の定める教育の機会均等の観点から、国内と海外における教育費負担の格差問題を指摘。当時の下村博文文部科学大臣と岸田文雄外務大臣に要望書を提出し、その後も社会に向けて「海外子女教育」の振興の必要性を訴え、発信し続けてきた。
この法律の基本理念を体現していくためにも、産学官民の今後いっそうの協力と注力が求められる。
なお、成立した「在外教育施設における教育の振興に関する法律」は次の通り。

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、在外教育施設が海外に在留する邦人である子(以下「在留邦人の子」という。)の教育を受ける機会の確保を図る上で重要な役割を果たしていることに鑑み、及び在外教育施設における教育を取り巻く環境の変化に対応するため、在外教育施設における教育の振興に関し、基本理念を定め、及び国の責務を明らかにするとともに、基本方針の策定その他在外教育施設における教育の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、在外教育施設における教育の振興に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって次代の社会を担い、及び国際社会で活躍することができる豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資するとともに、国際相互理解の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校又は高等学校をいう。
2 この法律において「在外教育施設」とは、在留邦人の子のために海外に設置された教育施設であって、次のいずれかに該当するものをいう。
一 学校に相当するものとして文部科学大臣が告示する教育施設
二 前号に掲げるもののほか、学校における教育課程の一部を行う教育施設であって、在留邦人の子の心身の発達に応じて体系的な教育を組織的に行うために必要なものとして、次に掲げる事項に関し外務大臣が定める基準に適合するもの
イ 教育施設の設置者
ロ 教育施設における国語教育その他教育の内容
ハ 教育施設に在籍する在留邦人の子の数
ニ 教育施設の教職員の確保の状況
ホ 教育施設の運営の体制
(基本理念)
第三条 在外教育施設における教育の振興は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 在留邦人の子の教育を受ける機会の確保に万全を期すること。
二 在外教育施設における教育環境と学校における教育環境が同等の水準となることが確保されることを旨とすること。
三 在留邦人の子の異なる文化を尊重する態度の涵養と我が国に対する諸外国の理解の増進が図られるようにすること。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、在外教育施設における教育の振興に関する施策を総 合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(連携の強化)
第五条 国は、在外教育施設における教育の振興に関する施策が円滑に実施されるよう、関係省庁相互間その他関係機関、在外教育施設の設置者等の間の連携の強化その他必要な体制の整備に努めるものとする。
(財政上の措置等)
第六条 政府は、在外教育施設における教育の振興に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

第二章 基本方針
第七条 文部科学大臣及び外務大臣は、在外教育施設における教育の振興に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 在外教育施設における教育の振興の基本的な方向に関する事項
二 在外教育施設における教育の振興の内容に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、在外教育施設における教育の振興に関する重要事項
3 文部科学大臣及び外務大臣は、在外教育施設における教育に関する状況の変化を勘案し、おおむね五年ごとに基本方針に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。
4 文部科学大臣及び外務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

第三章 基本的施策
(在外教育施設の教職員の確保)
第八条 国は、地方公共団体の協力を得つつ、在外教育施設の教職員を確保するために必要な施策を講ずるものとする。
(在外教育施設の教職員に対する研修の充実等)
第九条 国は、在外教育施設の教職員に対する研修の充実その他のその資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。
(在外教育施設における教育の内容及び方法の充実強化)
第十条 国は、在外教育施設における教育の内容及び方法の充実強化が図られるよう、参考となる資料等の情報の提供、在外教育施設における情報通信技術の活用の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、前項の施策を講ずるに当たっては、在外教育施設における教育の内容がその所在する地域の特色を生かしたものとなるよう配慮するものとする。
(在外教育施設の適正かつ健全な運営の確保)
第十一条 国は、在外教育施設の適正かつ健全な運営の確保が図られるよう、在外教育施設の運営に係る相談体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
(在外教育施設の安全対策等)
第十二条 国は、在外教育施設に在籍する在留邦人の子及びその教職員の安全の確保が図られるよう、在外教育施設の安全対策及びその所在する地域の安全に関する情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(在外教育施設を拠点とする国際的な交流の促進等)
第十三条 国は、在外教育施設を拠点とする国際的な交流の促進が図られるよう、在外教育施設における我が国の魅力の増進に資する活動(次項において「魅力増進活動」という。)の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、魅力増進活動に資する自主的な活動として、在外教育施設を拠点とした日本文化の紹介又は日本語の普及、在外教育施設における在留邦人の子以外の者であってその教育を受けることを希望するものの受入れその他の我が国に対する諸外国の理解の増進を図るための活動が行われる場合には、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うものとする。
(調査研究の推進等)
第十四条 国は、在外教育施設における教育の内容及び方法に関する研究その他の在外教育施設における教育に関する調査研究の推進並びにその成果の普及及び活用のために必要な施策を講ずるものとする。

附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後速やかに、海外から帰国した児童及び生徒であって日本語に通じないものに対する支援の一層の充実のための方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、在留邦人の子のために海外に設置された教育施設における小学校就学前子ども(子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第六条第一項に規定する小学校就学前子どもをいう。以下同じ。)に対する教育の実態について調査を行い、その結果を踏まえ、当該教育施設における小学校就学前子どもに対する教育の内容について検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとする。

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