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創立五十周年企画──日本の未来を担う子どもたちを皆さまと育むために──「維持会員企業・団体セミナー2〜海外子女教育の現状と課題、財団の役割〜」開催(海外子女教育振(2021年12月号)2021.11.25

10月14日、海外子女教育振興財団(以下、財団)は、創立50周年を記念して、──日本の未来を担う子どもたちを皆さまと育むために──「維持会員企業・団体セミナー2021〜海外子女教育の現状と課題、財団の役割〜」を維持会員企業・団体の人事担当者等を対象にオンラインで、午前と午後それぞれに行った。目的は「本財団の活動の本質的な意味や活動に対するご理解を深め、駐在員の皆さんに積極的な活用を推奨していただく」こと。
財団の理事長や職員のほか、文部科学省総合教育政策局国際教育課長の石田善顕氏および、午前の部ではサンパウロ日本人学校(ブラジル)の曽川和則校長とシドニー日本人国際学校(オーストラリア)の井川信也校長、午後の部ではハノイ日本人学校(ベトナム)の明石清二校長とチューリッヒ日本人学校補習校(スイス)の長森千枝校長が登壇した。
まず財団の綿引宏行理事長があいさつに立ち、日ごろのご支援・ご指導のおかげで五十周年を迎えることができたことに感謝し、この先も「なくてはならない財団」となるべく、未来世代の子どもたちをも視野に入れた、特にネットワークづくりに注力した改革を行っていく所存であると述べた。
そして財団の概要やおもなサービスについて紹介したほか、財団が設立された経緯について、海外子女教育への取り組みが個人レベルから企業レベルへ、そして社会的レベルに広がっていくのを経済界が一丸となって受けて発足されたと説明。「子女教育は次世代のグローバル人材育成を含め、企業発展のカギになる」として、その後も時代のニーズに合わせて事業を展開し、特にコロナ禍になってからは子どもたちの学びを止めないために、文部科学省の指導・支援を受けながら施策を行っている旨を具体的に示した。
さらに海外子女の動向、日本人学校や補習授業校の現状や課題、教育相談事業強化の必要性等についてデータや写真を活用し、駐在員を対象に行ったアンケートの結果も踏まえて語った。
特に日本人学校においては「国の支援を得ながら、我が国の海外進出企業により創られ運営されている学校」と説明し、子どもの学びを深め、人財育成を充実させるためにも、その魅力をさらに生かすべく支援していきたいと話した。
続いて文部科学省総合教育政策局国際教育課長の石田善顕氏が登壇し、日本の法律が適用されない日本人学校や補習授業校については外務省と連携しながら支援を行っていると述べ、文部科学省が打ち出した「在外教育施設未来戦略二〇三〇〜海外の子供の教育のあるべき姿の実現に向けて〜」に関して、策定に至った経緯およびポイントを次のように解説した。
〈目的〉
・ 「在外教育施設グローバル人材育成強化戦略」に基づく取り組みを発展させる。
・ ポストコロナ時代の在外教育施設の果たすべき役割や施策の方向性を明確化する。
・ 海外の子どもの教育について国家戦略としての支援方策を具体化する。
〈子どもの教育環境の変化〉
・ 海外の子どもの数の格段の増大
・ 海外で教育を受ける子どもの多様化
・ 在外教育施設へのニーズの多様化
・ ICT技術の飛躍的な向上
・ 在外教育施設における「令和の日本型学校教育の構築」
・ SDGsを踏まえた海外の子どもの教育機会の保障および「ESD for 2030」をめぐる動向
・ 新型コロナウイルス感染症等による影響
〈現状と課題〉
●在外教育施設全般
・ 現地校・インター校のみに通う子どもが増加→「選ばれる在外教育施設」づくり
・ ニーズが多様化→「多様なニーズにこたえる教育実践や学校運営」
・ 教育や運営を支える体制がぜい弱→「支援体制づくり」
・ 派遣教師の希望者が減少→教師派遣のインセンティブ向上
●日本人学校
・ 国内水準で見た場合、教員充足率やICT環境が不十分→国内同等の教育環境整備
・ 児童生徒数が減少傾向→「選ばれる日本人学校」づくり
●補習授業校
・ 「永住」と「駐在」の子どものニーズのかい離が顕著→多様性の包摂
・ 教師のほとんどが学校採用、研修機会が少ない→教師確保と資質・能力の向上
●私立在外教育施設
・ 建学の精神および海外の立地を踏まえた特色ある教育を実施
・ 過去二十五年間に十八校から七校に減少→特色ある教育の継続・発展
〈具体的な施策例〉
・ 多様な在外教育施設に寄り添い、特色を伸ばす支援の強化
・ グローバル教師を育成する好循環の創出・見える化
・ 安定的・効率的な運営のための支援の強化
・ 多様な関係者間の連携・協働の促進
・ 海外の子どもの学びの保障のいっそうの強化等
その後、午前の部ではサンパウロ日本人学校の曽川和則校長とシドニー日本人国際学校の井川信也校長、午後の部ではハノイ日本人学校の明石清二校長とチューリッヒ日本人学校補習校の長森千枝校長が自校の現状等について、写真等を活用しながらリアリティーある紹介を行った。
曽川校長は「サンパウロ日本人学校の挑戦〜コロナ禍を乗り越え、未来へのリスタート〜」と題し、コロナ禍での学校運営や子どもたちの様子等について紹介した。コロナウイルスの影響で以前に比べると在籍者数は減少し一〇〇人ほどになっているものの、現在は少しずつ戻りつつあるという。
AG5の取り組みもあっていち早く独自のオンライン授業に着手。現在は学年別に週四日の登校を可能にしている。「学校行事でいちばん大切にしたい」卒業式は感染対策に十分配慮し、卒業生と保護者限定で通常通り挙行。一昨年はコロナの影響で帰国していた生徒にはオンラインで卒業証書を渡す場面をつくった。入学式は二年間、オンラインで行ったが、後日、記念写真を撮影して配付した。
「安全・安心に配慮した学びの保障と思い出づくりは大切。それを実現するためにコロナ対策を行い、保護者や学校運営委員会との連携を密に取っている。グローバル人材『日本とブラジルのかけ橋』の育成という学校の未来像を皆で共有し、サンパウロ日本人学校ならではの教育を行っている。
子どもが帰国する際は玄関に設置された『別れ(希望)の鐘』を鳴らして送り出し、『絆』を実感している」と述べた。さらにコロナ禍で対面が叶わなくなったなか、全校の児童生徒、教職員がオンラインを活用して校歌をいきいきと楽しそうに合奏合唱する様子を動画で紹介した。
シドニー日本人国際学校の井川校長は「シドニー日本人国際学校の現状と取り組み」と題し、同じ校内に日本人学級(90人強。68%は駐在員子女、32%は現地在住者)と国際学級(小学部のみ140人弱。27%は両親が日本人、54%は片親が日本人、19%は日本のバックグラウンドなし)を持つことを生かした独自の実践等を紹介した。日豪の各国旗のメインカラーを生かした気品ある制服にも学校の精神が表れている。
日ごろから協働や交流は必然的に行われていて「2つのカリキュラム・1つの学校」を謳い、派遣教員は基本的に日本人学級を担当するが、行事やふだんの学校生活では国際学級の子どもたちを見守り、支援を行っていると話した。
さらにマーケティングにも力を入れ、ジェネラルマネージャーと共に教育内容の充実のみならず校舎をきれいにしたり路線バスに広告を入れたり等、児童生徒を確保するための努力も怠っていない。
「魅力的な学校づくりに、コロナ禍の対応を含めた信頼感ある安全対策、授業の質や専門性の向上、グローバル人材育成のための取り組みは大切。なかでも、保護者の多様化したニーズにきめ細やかにこたえていくことは欠かせない」と述べ、その一例として現地政府から出されたルールに則って実施した昨年度の運動会について触れた。保護者には無観客で行うことに理解を求め、少しでも満足してもらえるよう、ビデオを配信したり、プロのカメラマンが撮った写真を配付したりしたことを説明した。
ハノイ日本人学校の明石校長は「ハノイ日本人学校の現状」と題し、親日国であるベトナムにおいて児童生徒数は順調に伸びていて、コロナ禍で落ち込みはしたものの現在、400人強が在籍、そのうち約3分の1が外国にルーツを持つ子どもたちであると話した。
さらに同校が日本人社会におけるハブ機能を果たし、地元とのつながりにも貢献している様子を紹介するとともに、教育の特徴として次の6点を挙げた。
・ 少人数個別TT指導
・ 習熟度別の英会話授業
・ ICT教育の充実
・ 「誰ひとり取り残さない」SDGsの実践化
・ 漢字検定と数学検定(全校児童生徒)・英語検定(希望者)実施
・ 現地校交流・現地文化理解(独自に作成した副読本等の活用)
学校経営は企業経営の視点にも立ち、理事会と良好な関係を築き、理事会にも学校経営に積極的に参画してもらっていると話した。
「本校の強みは日本の教育をより充実した形で提供し、日本語で思考できるグローバル人材を育成できること。安全対策をしっかり行い、特別支援教育の充実にもオンラインを駆使して取り組むなど、多様性を受け入れる土壌を育んでいきたい」
卒業証書授与式に卒業生たちはベトナムの民族衣装で臨むのが伝統。画面に映し出された卒業証書授与式の写真には「国際的に活躍できる人材の育成」という文字が鮮やかに重ねられていた。
チューリッヒ日本人学校補習校の長森校長は同校について、児童生徒数は約二〇〇人、その約八割が永住者や国際結婚家庭の子女であり、学校運営の目的は「日本語学習を希望する日本および外国籍の子で、チューリッヒ日本人学校に通学していない児童生徒に対し日本語の補習教育を行うこと」と説明し、保護者の家庭学習を含めた協力は欠かせず、子どもたちが楽しく通えるよう、学校とチューリッヒ日本商工会が母体の運営委員会とが一体となり、同校ならではの実践を行っていると述べた。
現在はコロナ対策を行いながら、文部科学省や現地当局の指導に沿って対面授業を行っていると話し、これまでの経緯を時系列で示した。
19年度の卒業式は在スイス日本大使館等の助言を受けて日本人学校と共通理解をはかり、保護者等の理解も得たうえで動画や静止画を配信する等の工夫をして無観客で行った。20年4月、オンライン授業を開始する際には家庭にアンケートをとり、教科書を郵送し、教職員の研修を行うなど、綿密な準備をした。
「クラスを超える活動の自粛や外来の原則禁止等で、中止や延期、保護者参観自粛などの措置をとらざるを得ない行事もあるが、関係者と協議し理解を得ながら工夫して進むことで、実施の形態はこれまでと違っても子どもたちは意欲的に取り組み、教職員も大きな達成感を得ている。コロナ禍で得たものも多い」と、いきいきと学ぶ子どもたちの姿を動画で紹介した。「今後は安全対策を整え、保護者の多様化したニーズにこたえながらグローバル人材育成に取り組んでいきたい」と締めくくった。
文部科学省や在外教育施設の講演を受けて財団の綿引理事長が再登壇し、文部科学省とゴールを同じくする2030年までの中長期計画について、ポイントを4点に絞り説明した。
・ 駐在員の子女教育ニーズに的確にこたえる在外教育支援を展開。日本型教育のグローバル化と共に、国内教育機関に還元することで国内人財の底上げに貢献する。
・ 維持会員企業の海外人事業務におけるサービス領域を拡充し、知見を蓄積することで教育問題のソリューションパートナーとなるべく貢献する。
・ 次世代を担うグローバル人財としての海外子女・帰国子女の育成を通して企業人財の未来世代輩出に貢献する。
・ 日本型教育と日本文化の発信拠点たる在外教育施設への支援を通して、日本のよき理解者を海外各地で広く増強し、維持会員企業のビジネス基盤強化に貢献する。
実施にあたってはさまざまな領域の専門家とのアライアンスによって、総合的かつ先進的に解決する支援ができるよう教育のデジタル化を生かしたサービスの高度化および領域拡大に取り組んでいきたいと述べ、来年実施予定の「JOES Davos Next 2022」を具体的に紹介した。そして「今後の改革にはステークホルダーのネットワークづくりは欠かせない。ユーザー目線に立った新システム(ホームページ)が完成した際には充実したサービスを受けていただけるよう、駐在員の皆さまにはID登録を行っていただきたい」と懇願した。
さらに在外教育施設等におけるポストコロナ戦略については、事業部の葭和宣次長が次の3点を挙げて説明した。
・ 子どもたちの学びを止めないためのAIやITを駆使した教育環境の整備
・ 子どもたちの環境変化への支援サポート体制の整備
・ 在外教育施設における危機対応力を引き上げる支援
さらに、在外教育施設の規模に合わせて、大規模校では「日本式教育のほか、日本人のアイデンティティを持ったグローバル人材の育成を目的とした『グローバルクラス』の設置」、中規模校では「滞在国ならではの体験および所在国に応じた特色あるプログラムの実施」、そして小規模校では「安定した効率的な学校経営を目指し、他の在外教育施設との校務システムを含めた連携」に向けて支援していきたいと語った。
質疑応答では、講演した在外教育施設の校長に対して「海外赴任に際し、子どもの学校選択や転校に不安を覚えている保護者へのアドバイスを」、「帰国に際してどのようなことを不安に感じているのか」等の質問が寄せられ、「学校選択に関しては赴任先によって条件が異なってくることもあり、最終的には家庭の方針によるところが大きい。転校については、在外教育施設は全般的に子どもの出入りが多く、皆が転校という経験をしているため、優しく迎え、エールをもって送り出すという文化ができているので心配はいらない。ただし、コロナ禍もあって赴任先によって状況はさまざまなのでよく調べて情報を得ておくことが大切」、「帰国に際しては学習や受験、生活リズムに関して不安を覚えているという人が多いのでは。事前に情報を得たり、相談したりできるとよいだろう」といった回答があり、財団の「教育相談」の活用も勧められた。
午前・午後それぞれ約100分のセミナーだったが、参加した維持会員企業・団体等は約100件。なかには、午前・午後共に視聴した参加者も見られた。
その後、参加者からは「在外教育施設の状況が校長先生からの生の声でよくわかり、赴任者にリアル感を持って伝えられる」、「コロナ禍で、子どもたちの学びを止めないという先生がたの気持ちに頭が下がった」、「財団や文部科学省の方針がわかり、海外子女教育に注力しているのを感じて安心した」、「財団の設立の経緯を知り、企業の役割を感じた」、「今後の日本人学校間での交流活動について具体的に知りたい」等の声が寄せられた。

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