海外子女教育ニュース

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第2回経営アドバイザリーコミッティーを開催(海外子女教育振興財団)(2021年12月号)2021.11.25

 海外子女教育振興財団(以下、財団)は10月27日27日、綿引宏行理事長と浅原賢業務執行理事がホストとなり、「(財団の)新たな価値創造への挑戦」をテーマに、第2回経営アドバイザリーコミッティーをオンラインで開催した。
 本会の目的は「財団が海外子女教育・帰国子女教育の未来に向けて、より大きな価値を全ステークホルダーに持続的に提供できるよう、描いているシナリオを有識者のかたがたに討議していただき、関係者に提案していく。これにより維持会員のみならず日本社会・経済の発展に少しでも寄与していく」こと。全体的に日本人学校離れが進む傾向にあり、生き残るための魅力的な日本人学校の在り方についても探っている。
 コミッティーメンバーは東京大学大学院情報学環客員教授の辻村清行氏、環太平洋大学および国際大学IPU New Zealand学長の大橋節子氏、渋谷教育学園渋谷中学高等学校および早稲田渋谷シンガポール校副校長の高際伊都子氏、ミネルバ大学元日本連絡事務所代表の山本秀樹氏。
 まず財団から、海外駐在員を対象にした子どもの教育に関するアンケートの分析結果について、その一部が次のように報告された。
帯同する子どもの低年齢化が顕著であった。
「学校に期待していること」で、日本人学校か現地校やインターナショナルスクールかに関係なく、いちばん多かったのは「多様な経験」。
「学校に期待していること」で学校種ごとに大きな差が見られたのは、「学力伸長」「規範意識や思いやり」「帰国入試・受験の備え」(日本人学校に通わせている保護者は期待大)、「外国語力の向上「海外ならではの教育」(現地校やインターナショナルスクールに通わせている保護者は期待大)であった。
「学校に満足しているか」については「やや満足」も含め、満足していると回答したのは、日本人学校に通わせている保護者は70%弱、現地校やインターナショナルスクールの場合は70%強だった。
日本人学校、補習授業校、それぞれに通わせている保護者が学校に期待していることの上位は順に、日本人学校は「多様な経験」「学力伸長」「日本と同じ教育をさせる」、補習授業校は「日本と同じ教育をさせる」「日本文化」「学力伸長」であった。
学校選択を「失敗した・後悔した」という声があった一方、「家族でいっしょに赴任してよかった」という感想が多数見られた。
 続いて、文部科学省の「在外教育施設未来戦略2030」と財団が考える在外教育施設の在り方について示された。
 アンケート結果も踏まえ、コミッティーメンバーからは、おもに次のような意見や感想が挙がった。
 高際氏は、「アンケートで課題が浮き彫りになった。日本人学校を選ぶ保護者の思いと先生がたの考える教育にズレがあるように感じる。先生がたは、特に低年齢の子どもには規範意識や日本文化を伝えることに重きを置きがちだが、小さくても多様な経験をしたり、コミュニケーションスキルを磨いたりすることは大切」と話した。そして教員派遣に際し、先生がたの固定概念を変えられるような、これまでとは違った形での研修を行う必要があるのではないかと提案した。
 辻村氏は、アンケート結果は貴重なデータだと評したうえで、「日本人学校はなぜ生き残らなければいけないのか、そのロジックを明確にした方がよい。『日本人学校』とひとくくりにして考えるのではなく、場合や地域分けをしてそれぞれの環境での必要性を明らかにすることが重要ではないか」と指摘した。
 大橋氏は、財団が設立されて五十年という節目であり、コロナウイルスの影響で社会は大きな転換期にあると話し、「現地校に通っていては帰国した際の準備は不可能なのか、日本人としてのアイデンティティや学びを身につけることはできないのか、反対に日本人学校や補習授業校であればできるのか」と疑問を投げ、問題点の洗い出しや整理の必要性を訴えた。そして「文部科学省の戦略以上に、財団は日本人学校の存続に重要なポイントを意味づけないと課題の解決は難しい」と苦言を呈した。
 山本氏は、日本人学校と補習授業校に対する保護者のニーズの違いについて、「日本人学校を選択した保護者の場合、日本人としての行動規範はできていると考えて日本的な要素は学校に求めず、海外文化や多様な経験の方に興味があるという見方もできる」と指摘し、今後、日本の人口減少が予測されるなかでの新しい日本人学校の在り方として、「将来、ある程度の教育水準を持った移民が就労地に日本を選んでくれるよう、現地の子どもたちが日本文化に触れられる学校としてイマージョン教育を行うなどの新しいスタイルが考えられる」とアイディアを寄せた。
 次に、財団が政府と連携して進めるABCプラン(Always Better for Customers Plan)とその核となるシステム改革(ネットワーク強化)の現状が示された。
 それに対して山本氏は、「経営がうまくいっている学校のノウハウは共有されているのか」、「システム改革では新たに教育コンテンツをつくるのか、それともすでにあるものを有効活用すべく整理するのか」と問うたうえで、「外にある新しいものを持ってくるより、内部にあるものを上手に共有し応用させていく方が職員への浸透性が高くなるように思う。すでにうまくいっている事例を参考に、全体が自分事として経営を共有していくことが大切」と述べた。さらに、個々に行われているユニークな事例をデジタルのシステムに乗せることで応用可能なものになるとし、「そのノウハウをつくっていけば財団の独自性が出てよいのではないか」と新たな視点を示した。
 辻村氏は、「2030年を見据えたプランとのことだが、在外教育施設で学んだ卒業生の追跡調査はしているのか、エビデンスはあるのか」と問い、「これから行うのであれば、2、30人ほどのサンプルでよいので、滞在地域や当時の年齢別等で調査して課題を明確にすべき。そしてその調査対象の人たちとABCプランについて議論し、ブラッシュアップできるとよい」と述べた。さらにシステム改革については「既存のものでうまくいっているものもあるはず。それらをどうつないでいくかが大切で、『できるだけ変えない・つくりすぎない』ことを勧める。社会のニーズや技術は変わっていく。少しずつつくっていきながら、経験者にサンプル的に使ってもらい修正していけるとよい」と話した。
 その後、財団が始動もしくは実施を予定している「在外教育施設や児童生徒を対象にした研修やプロジェクト」が紹介された。
 大橋氏は、プログラムやコンテンツも大切だが、カギになるのは現場の先生であると述べ、人材養成の重要性を熱く語った。さらに「日本」を移した場づくりでは教育はうまくいかない、当地に合った確かな教育のできる校長や教員を適切に派遣できるかがポイントになると述べ、「コンテンツの出し方次第で子どもへの影響は大きく違ってくる。教育現場でそれをどう選択していくかを探るにはデータが必要。まずは受け入れ校に協力してもらい、帰国した子どもたちの経験や現状を調査してもいいのではないか」と提案した。
 高際氏は「日本人学校の課題は日本国内の学校にもあてはまる」と話したうえで、「財団は誰のパートナーなのか。日本人学校であれば、少子化に対応し経営リスクを小さくするためにも現地の子どもを入れたり、現地校の中にブースを設けて現地校で学ぶ日本人の子どもをバックアップしたりするなどの抜本的な新しい策を講じる必要があるかもしれない。一方、個人がパートナーであれば、多様なニーズにどこまで対応できるかがカギになる。また、集めた個人情報を『誰が・どう・いつ管理するのか』、『そのデータは誰のものなのか』によって活用の展開が大きく変わってくるので慎重に検討すべき」と述べた。加えて財団の存在意義には「海外子女や先生がたの気持ちに寄り添い、政府に問題提起をしたりすることもある」とし、一例として「カリキュラムに一定の自由度を与えるなど、学校の独自性を発揮できるようになれば校長先生の意識が変わるのではないか」と語った。
 辻村氏も「現地の校長先生をどう支援していくかが重要。悩みを聞く相談機能を設けたり、文部科学省や外務省にその声を届けたりできるとよい」と述べた。
 山本氏も「財団は現場の校長に寄り添い、その思いを政府に上げ、困難の打開策を探れるとよい。また、先生たちの横のつながりを活性化するためにファシリテータ的存在になれるとよい」と話した。
 四人のコミッティーメンバーの視野の広い貴重なアドバイスに、綿引理事長はじめ財団職員一同、感謝するとともに、大いに考えさせられての閉会となった。
 次回のアドバイザリーコミッティは来年5月に予定されている。

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