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「特別支援が必要な子どもの海外赴任帯同にかかわる不安や心配」等に関する情報交換(海外子女教育専門相談員連絡協議会)(2021年10月号)2021.09.27

海外子女教育専門相談員連絡協議会は8月27日、海外子女教育振興財団で本年度第3回の定例会を開き、「特別支援が必要な子どもの海外赴任帯同に関する不安や心配」等について情報を交換した。
海外駐在員を多く持つ企業等の教育相談員や国立特別支援教育総合研究所の研究員、帰国生をサポートする保護者の会等、約30人がオンラインも活用して参加した。
情報を提供したのは、ボランティアの会「With Kids─海外に住む子ども達の心の健康をサポートする臨床心理士の会─」代表の澤谷厚子氏。現在、東京都内の中学校や特別支援学校でスクールカウンセラーを務めるかたわら、ジャカルタでの子育てをきっかけに2006年に非営利任意団体「With Kids」を立ち上げ、現在、海外在住者を含む約20人の臨床心理士と共に海外からの子育て相談に対応している。
澤谷氏はまず「With Kids」の活動内容について、海外からの子育て相談にメールで対応しているほか、いくつかの国の日本人学校や幼稚園等を訪問したり、2カ月に1度、国内外のメンバーとオンラインでワールドミーティングを実施したり、年に1回7月に「たなばた会」と称し、「JAMSNET」や「Group With」、海外子女教育振興財団等の関係団体と情報交換するとともに連携を深めたりしていると説明した。また、ホームページで広報するほか、年に2回、ニュースレターを日本人学校等や関係機関に配付していると話した。
次に、2015年から19年までに扱ったメール相談を分析し、「発達にかかわる内容が全体の約3分の1を占め、男女比では男の子の割合が高い。年齢別では幼児段階の割合が最も高く、年齢が上がるにつれて減少していく傾向が見られる」と述べた。
発達に関する相談内容で目立ったものは、多い順に「現地の医療・療育情報」「心配・疑い等」「現地や学校の対応等」「日本での受診・検査等」「現地や学校での問題」「家庭での対応等」「帰国後の情報」についてだったと紹介する一方で、「心理検査の翻訳をどうしたらよいのか」といった事務的なものもあり、そのフォロー体制を整備する必要性にも触れた。
その後、海外赴任帯同に際して気をつけたい発達障害の子どもに見られる特徴として、「見通しの立たない状況では不安が強く、パニックを起こしやすい(変化に弱い)」「こだわりが強い」「感覚過敏」「外界刺激の認知の仕方に特徴が見られる」「ストレスをためやすい」等の傾向を挙げたほか、服薬管理の留意点等もあると指摘した。
海外で暮らすということは気候や言語、文化・習慣、食生活、健康管理(母国語での受診が難しい)、人間関係の状況が変わるということで、特別支援が必要な子どもにとっては大きな変化となり得る。
さらに、誰にとっても海外赴任で生活環境の変化は大きいが、それまで持っていた仕事を辞めて専業主婦となる配偶者にとってはさらに大きな変化となる。このような場合、狭い人間関係にストレスがたまり、それが家庭全体に悪循環をもたらすケースがあるので要注意と、警鐘を鳴らした。
障害の有無にかかわらず子どもにとって家庭は最も大切な安心の場であることが必要なため、赴任後しばらくは家族の「距離感」や「緊張感」の変化に互いが気を配って生活できるとよいと述べた。
そして、具体的に3つの仮想事例を挙げ、回答の概要を紹介した。

・ 父親の赴任にあたり、特別支援学校に通う小2の長男を含め、家族で同行したい。現地の日本人学校に個別支援級があると聞いて問い合わせたが、「これまでに特別支援学校からの児童を受け入れた経験がない」と断られた。そんなことがあっていいのか?(家族構成/父・母・長男〈小2〉)
日本人学校は日本の公立学校とは違い私立になります。そのため、日本での教育環境と同じ体制を求めるのは無理があります。海外に行くというのはこういうことなのだと、まずはその現実を家族皆で理解しましょう。そして、日本での療育と、家族でいっしょに過ごすことのどちらを優先するかを家族で決められるとよいでしょう。ただ、子供の年齢が低ければ低いほど、家庭の大切さを慎重に考えていただけたらと思います。
・ 日本で2歳児検診を受け、「少し気になるところはあるが様子を見ていこう」ということで、渡航。風邪で受診した現地の病院で、待合室での様子を見た小児科医から、小児神経科の受診を勧められた。どうすべきか。(家族構成/父・母・長女〈四歳〉・次女〈2歳〉)
おそらく、待合室で落ち着きがなかったり、ひとの話を聞けない様子が見られたりしたのでしょう。ひとまず検査を受けることをお勧めします。ただし、ことばが十分に通じる日本での受診を希望されるのであれば、一時帰国した際でもよいかと思います。
・ 息子はADHDの傾向があり現在通園中の現地の幼稚園に慣れるのに半年くらいかかったが、療育を受けたことはない。小学校進学に向けて日本で教育相談を受けたところ、新しい環境に早く慣れ、入学前に少しでも療育を受けるよう、早期の帰国を勧められたが、いま通う幼稚園からは、やっと慣れてよい状態で過ごしているのだから入学までとどまった方がいいと言われている。どうしたらよいか。(家族構成/父・母・長男〈5歳〉)
母親と子どもの負担の大きさを考慮すべきでしょう。母子だけで帰国する場合、子育ての負担はいっきに母親にかかることになります。また子どもにとっては、環境が変わる回数は小学校入学時に合わせて帰る方が少なくなります。あとは家族がどのように考えるかです。

最後に、参加者から事前に出されていた質問に答えた。「特別支援教育が整っていない地域に子どもを帯同する保護者にはどうアドバイスをすればよいか」については、保護者の不安感を軽減させるためには、事前に十分な情報を得ておくこと。特に変化に弱いお子さんに対しては、これから住むところ、通う学校等の情報を映像等を活用して伝えてあげるなど。また、お子さんをよく知る専門家にサポートのコツを聞いておくこと。必要であれば英文のメディカルレポート(服薬管理を含む)を作成しておくこと等の助言を勧めた。
「帰国後に子どもが環境に適応するために保護者はどうすべきか」については、滞在地では家庭が子どもにとっての安全基地になるよう心がける、SNS等を活用して保護者が日本語で子どもの問題について語れる場をつくること、帰国後は着任時以上にカルチャーショックを受けることもある点を知っておくこと等を挙げた。
そして、相談者はどんな支援を受けられるのかわからないがゆえの漠然とした不安を抱えていると話し、相談員はそれらの不安に寄り添い、これまでの努力をねぎらい、現実的な拠りどころとしての情報提供を行うとともに、日本語でつながることで安心感を与え、自信を回復してもらうことを心がけるとよいのではないかと述べた。

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