海外子女教育ニュース

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第72回グローバル化社会の教育研究会開催(2019年12月号)2019.12.13

11月15日、「グローバル化社会の教育研究会」が聖学院中学高等学校(東京都北区)で開かれ、教育関係者を中心に約20人の参加があった。「我が国におけるIB教育普及の現状と可能性」というテーマで、玉川大学教育学部教授で日本国際バカロレア教育学会副会長の江里口歡人氏が話題提供を行った。
江里口氏は玉川学園の「K─12」教育改革および国際バカロレア(IB)のプログラム導入に携わり、2014年、大学院教育学研究科にIB教員養成コースを立ち上げた経験を持つ。
江里口氏はまず、マイケル・サンデルの「Quality of life (生活の質の向上)」を糸口に、日本人が生活の質を向上させるためには価値観を転換する必要があると述べた。その実現に大切なものとして、学びや成長の原点となる「自尊感情(自分としても誇りに思い、他者からも十分に認められているであろうという自負心・自尊心)」と「社会構成主義(社会と学習の融合)」を挙げた。また、日本では議論が人格の戦いのようになる傾向がある点を指摘し、互いが主体性を持って話し合い、納得のいく解を模索していく姿勢の重要性を説いた。
IBではそれらについて具体的に学ぶプログラムが用意されていて、たとえば初等段階(PYP)では「私たちは誰なのか」「この地球を共有するとはどういうことなのか」等を考えさせるという。そして日本にIBを導入するにあたっては、学校教育を過去にさかのぼり、その目的やあり方について押えておく必要があると述べた。
さらに、学制の頒布を境にエリート階層のみが対象だった学校教育が一般にも急速に拡大・発展し、社会的に「教育=学校教育」という学校化が進んだ結果、「学校の学習や進学準備のための勉強が学習である」という価値が共有されることになり、現在は「人々の自ら学ぶ力、癒やす力、問題を解決する力」の退化が進んでいると警鐘を鳴らした。
続いて、音楽業界の日韓の戦略の違いを例に、日本の改革は部分的に行われがちだと話し、日本にIB教育を導入するにあたって懸念される課題として、「IB教育のシステムのみの導入」「IB教育に携わる教員が増えない」「文部科学省主導での導入」「ミッション・学習者像の表層的理解」を挙げた。
現在、IBの教員になるためにはワークショップを受講したり、大学や大学院でIB教師養成コースを受講したりする必要があるが、江里口氏は「これで十分なのか?」と苦言を呈す。そしてIBの教員に大切なのは「『授業の技術』と『IBの概念理解』の両輪」であると述べ、IBのガイドブックを熟読し、教授法などをきちんと習得してほしいと要望した。
最後に、世界で活躍できるグローバルな人材になるには「Think Globally, act locally(グローバルに考え、ローカルに行動する)」が大切で、IBによってそれは実現できると力強く結んだ。
会場からは「IB教育は、公立校、特に過疎化の進む地域にこそ導入されるべきではないか」「リベラルアーツやIBの理念に沿った教育を体現できる教員の養成や確保が求められる。すぐには解決できない大きな課題だろう」などの声が聞かれた。

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