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第2回「トビタテ! グローバル教師フォーラム」開催(文部科学省主催・海外子女教育振興財団共催)(2019年10月号)2019.09.17

文部科学省は2017年8月、グローバル人材の育成に向け、「教師自身がグローバル化しなくては」という観点から「トビタテ! 教師プロジェクト」を立ち上げた。
現在、世界50カ国以上に日本人学校や補習授業校があり、国内から1300人近い教師が派遣されている。国内同様のさまざまな教育が行われていて、4万人以上の小中学生等が通っている。
当プロジェクトにより、日本人学校や補習授業校の機能強化をはかり、派遣教師の「派遣前」「派遣中」そして「帰国後」の魅力を高め、グローバルな教師を育成していきたいとしている。
その一環として5月5日、文部科学省の講堂(東京都千代田区)において第2回「トビタテ! グローバル教師フォーラム」が開催され、今回は「在外教育施設から帰国した教師の派遣経験を国内の学校のグローバル化に活用するには!」をテーマに、元派遣教師をはじめ、教育関係者、学生や海外で子育てを経験した保護者等、約380人が来場した。
はじめに、文部科学大臣政務官の中村裕之氏が開会のあいさつに立ち、派遣教師の海外での経験を帰国後に国内の教育に還元していくことは、我が国のグローバル化において非常に大切だと述べた。さらに来場者に対し、本会が有意義なものになるよう積極的な参加をしてほしいと、明るく促した。
続いて、スポーツジャーナリスト等として国内外で幅広く活躍している元Jリーガーの中西哲生氏が派遣教師に向けて応援のメッセージを送った。中西氏は中学生時代にアメリカで過ごした経験を持つ。現在、海外で仕事をする機会は多く、その経験を踏まえ、人に何かを伝える際は、まずはこちらに興味を持たせ、笑顔で、受け入れる動機になり得るキーワードを持つとよいとアドバイスした。また、グローバルに活躍するために大切なこととして「何かを得ようとする気持ち」「自分自身の限界を決めないこと」「相手との関係をフラットに保つこと」を挙げ、うまくいかないときは「言いわけではなく、うまくいく方法を探そう」と語った。
次に、教育事例として、帰国教師を代表して東京学芸大学附属国際中等教育学校副校長の雨宮真一氏、自治体からは静岡県浜松市教育長の花井和徳氏が演台に立った。
雨宮氏は2011年から3年間、ワシントン補習授業校で教頭を務めた。現地でのさまざまな交流が授業の方法や教育観を見直す転機になったと言い、「日本の先生はゴール地点で待っていて、『よくできました』『がんばったね』と褒めるイメージだが、アメリカの先生はスタート地点から『なんて才能があるんだ』『あなたが私のクラスにいてうれしい』等と褒め続ける。帰国後、場面に応じての使い分けを意識するようになった」と話した。また、アメリカでは教師の仕事が限られ、家庭や地域等の大勢で子育てが分担されていることを紹介し、「さまざまな人がかかわることで子どもを多角的な視点で見ることが可能になり、協力関係を多く築くことが大きな成果を生む」と言い、「帰国後、すぐに日本に取り入れることは難しくても、海外の様子を知っていることで、違和感から変革につなげていけるかもしれない」と述べた。
引き続き、花井氏が「浜松市における外国人児童生徒等の状況と在外教育施設派遣教師に期待すること」というテーマで発表した。
まず、浜松市内の公立小・中学校は多国籍化・多様化が進んできていると説明。約八割の学校に外国人の児童生徒が在籍し、その人数は年々増えていると話した。それに伴い、日本語指導の必要な子どもも増加傾向にあり、指導体制の整備や子どものライフコースを見据えた支援に力を入れていると具体的に紹介した。そして課題として「子どもたちの多様性を生かした指導方法の確立」「外国人指導を教師としてのライフワークに考える教師を増やすこと」を挙げ、浜松市の派遣教師に対し、「浜松の外国人指導を充実させるというミッションのもと、日本ではできない経験を積み、日本とは異なる教育システムや価値観を学んできてほしい。帰国後は学校のグローバル化の推進役となり、外国人指導に積極的にかかわってもらいたい。また、浜松はインターカルチュラルシティのネットワークもあり、帰国教師には地域のグローバルリーダーとしての活躍も期待している」とエールを送った。
その後、「派遣経験は教師の成長にどのようなメリットがあるのか」「帰国教師を学校や地域で活かすための課題は何か」「グローバル教師としての帰国教師は、どのように活かし活かされるべきか」をテーマにパネルディスカッションが行われた。雨宮氏、花井氏に加え、海外子女教育振興財団理事長の中村雅治氏、フレンズ帰国生母の会代表の池谷明子氏の四人がパネリストを務めた。
まず、コーディネーターとして目白大学専任講師の近田由紀子氏がディスカッションの趣旨を説明し、「帰国教師や教育委員会、保護者や企業の立場からの各視点から、国内で活躍できるグローバル教師像を明らかにするとともに、その活用のための体制や仕組みについて議論したい」と話した。
続いて、中村氏が議論のベースとなる海外子女や外国人子女に関するデータを示したうえで「グローバル人材の育成にはグローバル教師の存在が不可欠。求められる資質には『人間らしさと地球を共に守る責任の認識を持った国際的視野』と『外国語によるコミュニケーション能力』等が挙げられる」と述べた。さらに文部科学省から委託されている「在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業」について成果も含め具体的に説明し、「ぜひ、グローバル教師にチャレンジを!」と鼓舞した。
次に、池谷氏がフレンズ帰国生母の会が行ったアンケート調査をもとに「多くの帰国生が先生がたには精神面でも学習面でも助けられたと感謝している。子どもにとって環境の変化は大きな不安を伴うが、そのたいへんさを乗り越えられたのには、『自分の存在を認めてくれた先生や友達の存在が欠かせない』と話す。国内で、転校したり、クラスのなかでちょっとみんなと違うと思われたりして、居心地の悪さを感じている子どもたちにとっても、先生方が海外で培ってきた『異・文化だけでなく異なるものへの理解』がそういった子どもたちを元気にするのではないか」と、帰国教師の活躍に期待した。
その後、四人のパネリストによる議論が始まった。「派遣経験のメリット」について、雨宮氏は「日本では普通なことがそうではないという経験は、『常識』を考え直すきっかけになる」、池谷氏は「海外生活を経験することで子どもたちが現地でどんな生活をしているのかがわかる。その共感的理解は帰国子女教育に生きるのではないか」、中村氏は「百聞は一見にしかず。交流授業等、現地の児童や先生がたとの交流を通じて得た異文化に関する見識や経験は帰国後のキャリアアップにつながる」、花井氏は「海外に出て日本のことがよくわかるとともに、在外教育施設で得た広い見識や多面的なものの見方、問題解決能力等はたいへんな魅力」と述べた。
「帰国教師が地域や学校にその経験を活かすための課題」に関しては、「派遣前に任務を明確にし、帰国後にそれを生かすサイクルをつくることが必要」、「働き方改革、教師の仕事内容を精選することが大切」、「教師の世界もグローバル化するよう、外国人の先生を増やすべき」といった声が会場からも挙がった。
「帰国教師の活かし方・活かされ方」については、池谷氏は「国内で取り入れられそうなことは積極的に実践してほしい」、雨宮氏は「教師は授業が重要。海外経験を生かし、インタラクティブな雰囲気で『やってみる』ことが大切」、中村氏は「教師には伸び代がある。引き出しを増やし、それを出す。そのやる気にかけたい」、花井氏は「教師はミッションを与えられれば一生懸命にやる。派遣前から明確なミッションを持って帰国後に生かす、そのサイクルを絶やさないことが大切」と語った。
最後に近田氏が「個々人の目的意識や使命感でできること、派遣のサイクル、帰国教師のキャリア形成の明確化などできることは多々ある。モデルとなる事例や考え方、具体的な計画等の情報発信・共有を積極的に進め、国内の各地域でグローバル教師が夢に向かって活躍できる力としたい。そして、このような教師の活躍が、予測不能な未来を生きる子どもの成長を支えることはもちろん、学校、地域社会の教育環境をより豊かにするであろう」と締めくくった。

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