海外子女教育ニュース

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かけはしセミナー2019(2019年8月号)2019.07.23

関西帰国生親の会かけはしは5月24日、大阪市総合生涯学習センター第一研修室において、「バイリンガルの言語と認知の発達─母語と第二言語の関連性について─」をテーマにセミナーを開催した。同志社大学文学部教授の赤松信彦氏が講師を務め、帰国生の親や教員等、約四十人が参加した。
同会は1984年に結成された帰国生の保護者によるボランティア団体で、『帰国生への学校案内《関西》』の発刊をはじめ、海外子女や帰国生への教育支援を中心に活動している。
赤松氏は、同志社大学卒業後、ニューヨーク州立大学大学院で教育学修士号、トロント大学大学院オンタリオ教育研究所で博士号を取得。高知大学、上越教育大学を経て、同志社大学に勤務し、第二言語習得における母語の影響について中心に研究している。
赤松氏はまず、言語を通して知識や技能を得ることの重要性を語り、母語と第二言語には共通する運用能力があるので、第二言語が弱いうちは母語で知識や技能を習得するのが望ましいと述べた。
続いて、母語以外の言語環境で育つ子どもは「どんな過程で二言語を習得するのか」「言語と思考の関係において、母語だけで生活している人とはどんな点で異なるのか」など、母語と第二言語(特に英語)の関連性について説明した。
また言語の発達には心理面の影響が大きく、「学年が上がるにつれ、学校などで高度な言語能力が求められる。学習内容が抽象的になるため習得にも時間がかかる」、「二言語がバランスよく発達することが理想的だが、そうでないバイリンガルが各地で見られる」と報告したほか、言語と認知発達について、「カナダのイマ ジョン教育の開始年齢と仏語習得の検証から、短期間に区切ると学習効率は年長の方がよいが、早期学習者は緩やかだが大人になっても伸びる」、「両言語が融合される前の過程にいる人が多い」、「長く暮らすと感覚がネイティブに近づく」などの研究結果も紹介した。
赤松氏は、カナダ在住時や帰国後の自身の子どもたちの会話および大学で教えた帰国生についての話も交え、「バイリンガルは、目標となるモデルのイメージを持つべき。日本社会で生きていくなかで、自分のアイデンティティと向き合いながら、かけがえのない体験を否定することなく視野を広く持って進んでほしい」とエールを送って講演を締めくくった。
その後、会場から母語を維持する方策について問われると、「家庭内で母語を使う時間を確保したり、その方法を工夫したりしてほしい。地域や日本人同士で連携して行うのも有意義」と話した。
詳細は10月に発行される『帰国生への学校案内《関西》2020』に掲載される予定。

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