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第1回「トビタテ! グローバル教師フォーラム」開催(文部科学省主催・海外子女教育振興財団共催)(2018年10月号)2018.09.14

文部科学省は2017年8月、グローバル人材の育成に向け、「教師自身がグローバル化しなくては」という観点から「トビタテ! 教師プロジェクト」を立ち上げた。
現在、世界50カ国以上に日本人学校や補習授業校があり、国内から1300人近い教師が派遣されている。そこでは国内同様のさまざまな教育が行われ、約4万人の小中学生等が通っている。
当プロジェクトにより、日本人学校や補習授業校の機能強化をはかり、派遣教師の「派遣前」「派遣中」、そして「帰国後」の魅力を高め、グローバルな教師を育成していきたいとしている。その一環として8月20日、第1回「トビタテ! グローバル教師フォーラム」が開催され、派遣を希望する教師や元派遣教師、教育関係者、学生等、400人強が来場した。
はじめに、中学校と高校で英語教師を務めた経験を持つ文部科学大臣政務官の宮川典子氏が開会の挨拶に立ち、社会のグローバル化に対応できる子どもを育てるには教える側もグローバルになることが必要だと述べ、教師に対して海外に出ることを勧めた。また帰国後、海外で得た力を伝道者として国内の学校で生かすにはどうしたらよいかも含め、「グローバル教師とは」について考え、日本の子どもたちが幅広く深みのある視野を持てるように育ててほしいと願った。引き続きグローバル人材育成アンバサダー就任状授与式が行われ、宮川典子政務官からJAXA宇宙飛行士の油井亀美也氏に就任状が手渡された。
次に、油井氏が「宇宙で気付いた大切な事」と題した基調講演を行った。まず、宇宙や国際宇宙ステーション(ISS)、宇宙飛行士等に関して動画も含めてわかりやすく説明した。宇宙から見る地球はとても美しく、特に日本は夜でも明るくその繁栄ぶりは誇らしかったと紹介し、天然資源の少ない小さな日本が大国になれた理由に、「世界に誇る人材・科学技術」と「他国との良好な関係」を挙げた。そして「他国と良好な関係を築く鍵はISSにあり!」とし、現在15カ国が参加するISS計画でミッションを遂行するためには、相手に対する理解・尊重、気遣いを自然に行える力が必要だとし、それが地球でできれば世界は平和になるのではないかと述べた。
さらに、その力を身につけるためにも、海外でいろいろな人たちと仕事をしてほしいと語り、油井氏自身、海外に行ってよかったこととして「世界を知ることで日本を知ることができた」「文化や考え方の違いを理解し、相手の文化を尊重できるようになった」「困難な道の先に、明るい未来があることを実感した」ことを挙げた。
また、宇宙飛行士になるという夢の実現に向けて力をもらったこととして、「子どものころ、『好き』という才能を伸ばしてもらった」「がんばっただけ道が開けると教えてもらった」「困難な道にチャレンジすることの大切さを教えてもらった」ことを挙げ、笑顔で「次は月に行きたい」と夢を語り、「飛び立て世界へ! そして、明るい未来をつくりましょう!」と力強く締めくくった。
質疑応答では多くの手が挙がり、油井氏は質問者の近くまで歩み寄って一つひとつ丁寧に答えた。
「互いにリスペクトし合うことが大切だと感じた瞬間は?」という質問には、ISSでのすべての仕事で感じていると話し、「トラブルはどう解決してきたか?」には、協調性の大切さを説き、周りとうまくやっていくコツとして「プロ意識」「相手を理解しようという気持ち」「気になったら初期段階で話し合うこと」等を挙げた。さらに「グローバル教師とは?」には、自身の経験に基づいてグローバルな視点を持ち、子どもにそれを伝えられる教師ではないかと答えた。
続いて、「グローバル教師が学校をどう変えるか」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。パネリストはニュー・デリー日本人学校の元派遣教師で埼玉県狭山市立柏原小学校教諭の池端美希氏、元JICA青年海外協力隊派遣教師で兵庫県三田市立弥生小学校教諭の横山真澄氏、リヤド日本人学校の元派遣教師で岡山市教育委員会教育長の菅野和良氏、三菱商事株式会社人事部人材開発室担当部長の山中毅氏の四人。
まず、コーディネーターを務めた明治大学特任教授の佐藤郡衛氏がディスカッションの趣旨を説明、「教育のグローバル化の進行に対応できる教師を『「グローバル教師』とし、そうなるには『在外教育施設や海外での教師経験が役立つ』という仮説のもと、『その育成につながる体験や実践、取り組みとは何か』『海外での経験を帰国後の力量形成につなげていくにはどうするか』について、パネリストの発表を踏まえて考えたい」と述べた。
池端氏はインドのニュー・デリー日本人学校で力を入れたこととして、子どもたちに「インド大好き」「日本ってすごい」と思ってもらえるような取り組みを挙げた。自国理解教育、他国理解(現地理解)教育、交流活動を国際理解教育の三本柱とし、そこに英語教育を加えた具体的な実践、インドの教材を使った図工や体育、また交流活動ではスポーツや伝統文化紹介等、子どもの発達段階に合わせた魅力的な内容が画像で紹介された。池端氏は日本人学校で働くことの意味として「日本の教育を世界でも展開できること」「グローバル人材等との出会いで広がる教育観」「人と人とのつながり」を挙げ、かけがえのない経験だったとふり返った。帰国後は授業等で経験談を話し、子どもたちが広い視野を持てるよう心がけていると語った。
横山氏はモロッコの現地校で教育活動を行ってきた体験をふり返った。赴任した学校は貧しい学校で手を洗うのも不便な状態。教材は現地で入手できるもので一から手づくりするしかなかったという。横山氏が行う情操教育の時間は確保されてなく、現地の先生に交渉して時間をもらうことからスタート。ペットボトルを利用した体育や理科の授業、石に絵を描いたりノートの切れ端で切り紙をつくったりした実践、さらに日本文化を体験するイベントなどを画像で紹介しながら、何もないなか、現地の人たちとの関係づくりや工夫が必須だったと語った。帰国後は、OB・OGのネットワークで活動している。モロッコでの経験を通して、「そこにあるもの」を生かし、多様性を認められるようになれたのは大きいと明るく語った。
菅野氏は「グローバル教師が学校をどう変えるか」と題し、「インシャッラー(神の思し召すままに)」を大切にするサウジアラビアのリヤド日本人学校での経験等を通して思いを語った。グローバル化が進むなか、教師には「温かい国際人(命を大切にし、故郷や友達を愛し、文化の違いを受け入れることができ、地域社会に貢献できる人)の育成」に資することを期待していると述べた。教師の異文化体験は「多様な価値観を認め、人権感覚を磨く基礎となる」「アイデンティティの確立に役立つ」「学習指導要領をアレンジする力がつく」「一生の研究課題が手に入る」と話し、赴任地がどこであれ「住めば都」と教師たちの背中を押した。さらに今後に向けて「優秀な若い教師を意図的に派遣し、『温かい国際人』の育成に努めてみたい」と希望を述べた。
山中氏は海外経験豊富な企業人として派遣教師にメッセージを送った。自身も理事として運営に携わったミラノ日本人学校は明るく優しい子どもが多く、それは派遣教師がよき伝統をつくり引き継いできたおかげだと話した。続けて教師が海外赴任するよい点として「グローバル教師が生まれ、グローバルな子どもが育つ環境につながる」「世界の広さや多様性、日本の素晴しさをあらためて学ぶ機会を得る」「日本文化を発信することで国際交流が促進される」ことを挙げた。また、帰国後に期待されることとしては「学校のグローバル化へのリーダーシップを発揮する」「国内の児童生徒に国際感覚や外国語の重要性、国際交流の大切さを伝承する」「帰国子女の特性を伸ばし、在校生から日本的感覚も学ばせ、全体のレベルアップを行う」「外国人児童生徒教育へのイニシアチブを発揮する」ことを挙げた。
パネリストたちの話を受け、佐藤氏は「グローバルな資質は実際の関係性を通して育まれるもので、海外経験は教師に必要な能力を育ててくれる。在外教育施設を『開かれた学校』にすることは大切であり、教師派遣に関しては帰国後を含め組織・制度レベルで整えていく必要がある。そのためにも海外子女教育や在外教育施設のサポーターを増やし、皆で学校のあり方を考えていくことが大切なのではないか」と広く協力を求めた。
本フォーラム終了後、ある元派遣教師は「『派遣』をたんなる過去にしてはいけないと思った。グローバル教師のひとりとして、日本の教育に貢献するために何ができるか考えたい」と語った。また教師を目指しているという学生は、「まずは自分がグローバルな人間にならないといけないと強く感じた。それを実感できたことがとてもありがたい」と感想を寄せた。
なお、詳細につきましては、文部科学省のサイトをご覧ください。
URL: http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/1395480.htm

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