基調講演

山中伸弥教授「夢を叶える力」を語る

オンライン配信により約1万人が視聴

山中伸弥教授による基調講演「夢を叶える力」は、2022年9月6日(火)日本時間午前にオンラインでライブ配信されました。子どもたちは、自宅から、あるいは国内外の学校参加校の教室から、温かく親しみやすい口調で語りかける画面の中の山中教授の話に耳を傾けました。その後、時差の都合などでライブ視聴できなかった子どもたち等を対象にオンデマンドで配信されました。講演後もオンデマンド視聴の申し込みが相次ぎ、当初の予定より長く2022年12月末まで公開を延長、最終的な視聴者数は約1万人となりました。

子どもたち自身が直接質問を

基調講演では、山中教授によるレクチャーに続いて、教授と子どもたちの直接対話の時間を設けました。基調講演の視聴申込者には事前にiPS細胞に関する学習資料を提供して質問を募り、当日はその中から数人がWebカメラをオンにして山中教授に直接質問しました。さらに講演中にもオンラインで質問を受け付け、その場で司会の桑原りささんが代読で質問しました。
質問内容は「後悔していること」「夢の見つけ方」など生き方にかかわるものから、生物の一生の意味を問うものや、特許に関する国際競合や生命倫理など研究内容に踏み込んだ質問まで多様でした。山中教授は、どの質問にもじっくりと言葉を選びながら、時には笑顔やユーモアも交えて丁寧に答えました。

講演要旨 

医学の道に進んだきっかけは、父親が輸血によって原因不明の病気になり苦しんでいる姿を見てきたこと。研究で病気を克服しようと研究医を目指した。アメリカ留学から帰国後、1999年に奈良先端科学技術大学院大学で研究室を持ち、「皮ふ細胞をリセットして万能細胞に」をビジョンとして掲げた。2004年に京都大学に移り、06年に仲間たちと共にiPS 細胞の作製成功を発表した。
 山中教授が大切にしているのは、アメリカ時代の恩師から学んだ「VW=Vision&Work Hard」(明確なビジョンを持ち、懸命に努力する)の精神。さらに、異分野の人と交流すること、ひとりで抱え込まないことが重要だと述べた。そして、「ピンチはチャンス」と考えて、変化を味方にしようと呼びかけた。
 最後に、世界中の子どもたちに向けて、「小・中学生は人生の宝のような時期。いろんなことに挑戦でき、失敗も許される。失敗の数だけ成長できる。失敗は挑戦しないとできない。何もしないことこそ失敗。どんどんトライしてほしい。それが将来の宝になる。がんばってください」と締めくくった。(月刊海外子女教育2022 年10 月号より引用)
©京都大学iPS細胞研究所
京都大学iPS細胞研究所
名誉所長
山中伸弥教授