海外学校関係者の方

在外教育施設事務長会議 2015年度開催内容 分科会@A-日本人学校・大規模校<8月6日(木) @13:30-15:00 A15:10-16:40>

テーマ・・・事務長の職務、学校の運営・管理について

◆事務長からの理事会、校長への不満
◆学校採用教員の面接、赴任費用
◆校舎改築等、将来的な大規模支出への対策
◆英会話の授業
◆学校のPR
◆カリキュラム・コース作り
◆ITの活用
◆校章の商標登録

 ●事務長からの理事会、校長への不満
  • 就任したばかりで、いろいろとサポートしていただけるので助かっている。現状不満はない。
  • 予算への関心がゼロのため、決裁内容をよく確認せず、印を押してしまう。
  • 事務長が判断しにくい案件に対する対応についてハッキリ決められない。
  • 校長自らが面接し採用した教員が問題を起こしたとき、校長はその対応に関与せず、教頭に任せている。
  • 理事も人によっては関心度合が違う。
  • 運営委員長と日本人会長と事務長の3者で課題を話し合っている。
  • 理事全員で話し合うと話がまとまらないため、3〜4人の少人数で「検討委員会」等を作って話し合い、議案として理事会に挙げると、話が通りやすい。
  • 理事会から出てくる不満は、校長が変わるたびに学校の教育方針が変わり、その方針も抽象的で判りづらいこと。日本の私立学校の学校案内のように、その学校のカラーを出して、「本校に通わせるとこうなります」とか、もっと分かりやすいグランドデザインを見せる必要がある。校長にも話をしているが、相変わらず毎年方針が変わっている。
  • 複数校舎を持つ学校では、「代表校長」を決めているか? ⇒1校のみ。
  • “縦”の連絡には慣れているが、“横”の連絡には慣れていない。そのため、代表校長の意向に従わない校長もいる。
  • 日本の小学校で教頭をされていた方で、日本人学校に赴任後、「中学校は知らない」と言う方がいた。
  • 複数校舎あるが、意見がバラバラで決められない。例えば3校で1つのスタンスで教育方針も統一するのが理想だが実際には難しい。
  • 事務長が出ると、「教育に口を挟むな」と言われる。
  • 複数校舎で方針や意見を統一できる方法はないのか。
    ⇒これまではそれぞれが好き勝手なことをしていたが、お互いの腹の内がわかるように話をする場を設けた。最初は大喧嘩もあったが、今では複数校舎で考えを統一して運営委員会へ提案する等、良い効果が出ている。
 校舎改築等、将来的な大規模支出への対策
  • 中途採用の面接には「スカイプ」を使用しているが、当たり・外れがある。
  • 中途採用であっても必ず日本に行って校長が面接をする。
  • 急遽採用する場合は、前校長や前教頭に面接を依頼する。ボランティアで対応してもらっている。
  • 教員採用は日本に年間20万円をかけて募集広告を出している。年間30人程度の応募者がある。
  • 財団を通さず、学校採用した教員は、赴任までの交通費等の経費は自己負担である。。
  • 旅費規則等を作成する際に「国家公務員旅費法」を参考にした。
  • 文部科学省の赴任の手引きに赴任費用が掲載されている。

校舎改築等、将来的な大規模支出への対策

  • 校舎が築22年。築50年後に向けた積み立て事業を始めた。現時点で校舎を建てたら費用は幾らかかるのかをコンサルタントに依頼した。依頼費用として2百万円支払ったが、保護者に説明するときに「コンサルタントを通じて試算しました」という“看板”が必要なため、やむを得ない。
  • 試算は現状の児童生徒数が今後、「減る」「増える」「横ばい」の3ケースで試算した。
  • これまでは授業料を運営資金として使っていたため、ほとんど残していなかったが、これからは1年分の運営資金程度の金額を貯蓄してはどうかとの話が出ている。
  • 校舎建て替えについて、1/3は政府援助、2/3は自己負担で試算している。今のご時勢、寄附金は当てにならない。
  • 援助を受けてから47年を経過していないため、校舎の建て替えにシドニー方式は利用できない。
  • お金をかけて耐震工事を行ったが、将来的な積み立てはしていない。
  • 銀行は、担保がないとの理由から、お金を貸してくれない。
  • すでにある学校・校舎の改築は自助努力で対応するよう外務省から指摘を受けた。また、47年経過したからといって再度シドニー方式の申請を出しても、前例がないから外務省も回答できない。
  • シドニー方式は学校がない所や児童生徒が今後増えるのが前提。
  • もしかしたら「明日撤去しろ」と当局から言われる可能性もある。下手に動けず、計画ができるだけまだマシ。

英会話の授業

  • 専科の教科が多くなったため、クラス担任の授業時数が少なくなった。日本に帰国してから英会話の授業ができないと困るとの判断から、来年度から担任もT2として授業に入ってもらう予定。
  • 「外国語活動」と「英会話」の違いについて意見交換。

学校のPR

  • 児童生徒確保のためのカリキュラム・コース作りに向けて準備を進めている。それにプラスして学校のPRやイメージ戦略として教員が簡単に更新できるよう学校HPを工夫し活用している。
  • 経験年数3〜5年の即戦力となる教員を効率よくたくさん確保したい。そのために日本に向けて広告を出している。掲載方法を工夫して効果測定をする等、今後のPR・募集の参考にしている。
  • 学校の長期的な戦略を考えるうえで、ガバナンスをどのようにするか。また、校長が3年ごとに交代するため、長期目標・方針・計画が引き継がれにくい。校長にはカリキュラムに則った学事の遂行と校内の人事を行ってもらい、その他の学校方針、目標や教育の効果測定は事務長が、表に立たないようにうまくコントロールしていく必要があるのではないか。中期的にみて危機感をもっている。

カリキュラム・コース作り

  • 新しい校長に代わっても、すでに理事会で決定済みの中学部の新カリキュラムは進めていく。今のイマージョン教科(体育、美術、音楽、家庭科)に数学と理科を追加、英語はネイティブが、日本語は日本人の副担任が対応。しかし、1クラス30人の2クラス編成で講師を1人雇うのに数百万円かかる。どう受益者負担するのか、これから検討する。
  • グローバルクラスを設けるにあたって、これまでの既存クラスの方から「グローバルクラスを設けるから授業料等の負担が増える」との誤解を受けないように、グローバルクラスでかかったコストはグローバルクラスで負担する。また、日本の私立校のような選抜クラスと普通クラスのような(格差のある)選抜クラスを作った方が良いのではないか、と教員から話が出ている。レベル別に3つのクラスに分け、授業料も変えるという案もある。しかし、こうした差別化について疑問もある
  • 選抜クラスを作った方が良いのではないか、と教員から話が出ている。レベル別に3つのクラスに分け、授業料も変えるという案もある。しかし、こうした差別化について疑問もある。
  • そのような学校に勤務した経験のある教員が言うには、@差別化をするならば徹底的に。A学費を上げるならばプレミアム感(制服や通学バスが違う等)を出さないと保護者は納得しない。B軋轢は必ず生じるのでその対応が必要。とのこと。
  • そこまでくると、もう一校別の学校を作った方が良いのではないか、と思ってしまう。
  • グローバルクラスを設ける際に、授業を英語で行っている以外、学校行事、クラブ活動、制服などは全て既存クラスと一緒であり、特別扱いしていない。
  • 「インター校化」の検討。インター校のようなサービス、カリキュラム等があればインター校からの受け入れ、特に理科や社会で日本語能力が低くても受け入れできる可能性もある。すでに新カリキュラムを取り入れている他校の動きが気になる。
  • インター校に通わせている親にアンケートを取ると、日本の教育(指導内容)が良いと回答する方もいる。基礎学力がつく日本の教育を、英語で授業をするカリキュラムを評価してもらっている。
  • 学習指導要領(英語版、小学部)をネイティブに見せて、理解させたうえで授業をさせている。
  • どの国の講師を雇うかで、学校側の苦労が違ってくる。
  • 「教員免許を持っているネイティブは給与が高い」ということを理事会に理解してもらえない。
  • 特に外国語での授業について、評価はどうされているのか。要録を書くために評価が必要で、それにこだわる教員もいる。ネイティブ講師だけでも授業はできるが、日本人の副担任をつけなければ評価は不可能である。

ITの活用


 <活用している学校からの状況説明>
  • 現地の公立校では、生徒(中学生以上)にWindowsパソコンを購入させて(買えない家庭は学校が貸与)、教科書をPDFデータ化して配布。基本的な学習はPCで、反転学習も動画を見て行う。また、プレゼンテーションを導入している学校もあると聞く。現地の中等教育は詰め込み型なので、考える力を重視する日本の教育の方が優れているが、問題を解かせる能力については現地の方が上かもしれない。
  • 日本人学校(小・中)のカリキュラムが良いので、無理にITを詰め込む必要はない。ただし、教員にはi-Padを持たせて、”見せる授業”を重点的に行っている。ただし、i-Padを使うのも授業の最初の5〜10分間(つかみの部分)のみ、その後は通常の授業を行う。この5〜10分間で子どもの集中力を持続させたまま円滑に授業に入ることができるので非常に効果的である。シニアの教員にも積極的に使用してもらっている。
  • 分からない単語もすぐに検索をして教えることもできる。ユーチューブを使って動画を流すこともできる。
  • i-Padのカメラを使って、体育の授業で動画を取って、その場で動きをすぐに確認・指導できる。
  • 教員はi-Padを、児童生徒はグーグルのChrome-bookを利用している。現在は学校の備品を貸与しているが、来年度からは各児童生徒(家庭)に購入してもらう予定。Chrome-bookは1台約35,000円程度。
  • 中学生全員にメールアドレスを発行して、学校からの連絡、課題の配付、レポートの作成、動画を見せて反転学習を自宅でさせる。また、理解度を測るためにアンケートも実施している。課題やアンケートは各児童生徒から送信されたものが教員にまとめて届くような仕組みになっている。
  • 有害サイト閲覧等の対応は、ライセンス(マネージメント・コンソール)を用いて学校が一斉に閲覧制限をかけられる。ただし、転出する児童生徒に対してはライセンスの制限を外す必要がある(端末を購入した場合)。
  • 学校閉鎖になっても、家で課題をさせることも可能。
  • ITをきっかけにして英語教育を変えていきたい。英語はもともとタイピングの文化なのでITを活用することに何の支障もないと思う。これまでは箱物(教室)を作るのが事務長の仕事であったが、これからはできるだけお金を使わずにソフト(システム)を作る方にシフトして取り組んでいる。
  • 小学部では同じChrome-bookを学校で導入し、個人で持たせることはしない。例えば、学校のコンピュータ室(予約制)は主に「総合の時間」や調べ学習等で小1〜6年が使用するため、予約が大変である。予約できなかったときのために、コンピュータ室と同数(80台)のChrome-bookを予備として用意している。利用する際は、コンピュータ室から端末を持ち出してクラスで授業している。
  • 小5、6年では総合の時間で児童の地元の特産品や観光地等についての発表や、クラス内の選挙のプレゼンテーション等を行っている。調べ学習の次のステップとして今後も活用したいと考えている。
 <質疑・その他>
  • この方法で運営すればコンピュータ室は不要になる。是非現地に行って利用状況を見てみたい。
  • 本当の緊急連絡のみSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を活用している。
  • デモや災害などによる通学バスのお知らせもSNSを活用するとすぐに連絡が送れる。さらに校外学習や宿泊学習の様子もSNSを活用して保護者に報告している。保護者には好評である。
  • li>修学旅行の報告はWEBサイト上に掲載している。そのときだけアクセス数が非常に多い。パソコンが苦手な教員でもHP更新できるようにシステムを変えた。 li>学校でITスタッフを雇うと、その人が学校を辞めてしまったときに知識が途絶えてしまうので怖い。 li>財団で是非在外教育施設向けのITのプラットフォーム(システム)を用意してほしい。

校章の商標登録

 
  • 名刺に入れている校章は現地で商標登録しているか? ⇒全校登録していない。
  • どの国でも登録は必要だと思う。デザインのバランスや色使い等が統一されていないケースが多い。

以上