海外子女教育ニュース

海外子女教育ニュース

東京学芸大学国際教育センター40周年記念会開催(2018年3月号)2018.02.15

東京学芸大学国際教育センター(旧海外子女教育センター)は今年で創立40周年を迎える。その記念事業として、1月27日に東京ガーデンパレス(東京都文京区)で「文化間移動する子どもの教育と国際教育センターの役割」と題した記念会が行われ、100人を超える教育関係者等が来場した。

同センターは1978年、海外子女教育の研究・教育活動の拠点となる全国共同利用施設として設置された。その背景には急激な経済発展に伴い、海外駐在員および帯同される子どもが増加し、その子どもたちへの教育上の対応が求められたことが挙げられる。
はじめに同センター長の馬場哲生氏が開会のあいさつに立ち、続いて同大学長の出口利定氏と同事務局長の日向信和氏が祝辞を述べた。
第1部の記念シンポジウムでは、「文化間移動する子どもの教育と国際教育センターの役割」をテーマに、国際教育センター教授の吉谷武志氏がコーディネーターとなり、東京学芸大学准教授の見世千賀子氏、同大学教授の齋藤ひろみ氏、同志社女子大学教授の塘利枝子氏、中央大学教授の森茂岳雄氏の四人がパネリストに立った。
まず見世氏が、文化間移動する子どもの教育において同センターが行っている取り組みについて、これまでの歩みを含めて説明した。
齋藤氏は、外国人児童生徒教育の立場から、子どもの資質や能力の重要な要素としてことばの力を挙げ、「彼らを次の社会を形成する一員として育てる姿勢が重要」と述べた。塘氏は文化間移動する子どもの発達の視点から、文化間移動には国・学校・家庭など二重三重の影響を考えないといけないと話し、同センターに対し「国内外の教師や保育者のリーダー的な存在になってほしい」と期待を語った。森茂氏は国際理解教育と市民性教育の視点から「子どもを社会的正義や公正のために行動できる市民として育てるためにも、各方面の研究をつなぎつつ、グローバル・シティズンシップ教育としての国際理解教育のさらなる研究と推進が必要」と要望した。
会場からは外国人が日本で暮らすことのたいへんさが語られ、異文化で育った者同士が共生していくためにはどうしたらよいのか等の質問が出され、パネリストからは「いっしょに何かをしたりつくったりすることが大切」「対話を繰り返すことで互いの距離感が小さくなっていく」といったことが具体的な事例を交えて紹介された。
第2部では目白大学学長・東京学芸大学特任教授の佐藤郡衛氏が「文化間移動と教育 その研究と政策を振り返る」と題した記念講演を行った。佐藤氏は、同センターの元教授で、海外・帰国子女教育、外国人児童生徒教育、国際理解教育、異文化間教育において、多くの政策に関与するなど、長年、その発展に貢献している。さらに現在は海外子女教育振興財団が文部科学省から委託された「在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業」において、その運営指導委員会の委員長として共同研究に携わっている。
この講演で佐藤氏は自身のライフストーリーを通し、「異文化間教育学」の視点を貫いて行ってきたこれまでの研究活動をふり返り、研究者に求められる姿勢として「社会や時代と共に研究の主題や対象、その方法は変化するが、そこに共通に貫く視点は必要」、「環境に合わせて、研究のスタイルを変える柔軟性が必要」、「研究は個人ではなく協働で行うことで自身の研究も広がる」、「現実を変革するにはたんなる研究だけでは対応できないので、自分の位置取りを明確にしたうえで政策とのかかわりをプラスにする」とまとめた。
さらに国際教育センターに対し、「行政との連携は不可欠で、行政と実践をつなぐ役割は変わらない。新たな研究対象も加え、センター全体での協働型プロジェクト研究の推進が必要だろう。外部評価もとり入れながら、学内的にもどのような役割を果たしていくべきか考えていってはどうか」と提言した。
会場から、海外子女教育と外国人児童生徒教育とのつながりについて問われると、海外子女教育で培われてきた受け入れ制度や日本語指導などが外国人児童生徒教育に生かせる一方で、多文化共生における国籍や民族の問題など、別に扱うべき研究もあると述べた。
来場者のなかには同センターで学んだ卒業生や在外教育施設の元校長など、遠方からの参加者も少なくなかったからか、旧交を温め合う姿が多く見られた。終了後は、「休憩中にあちこちで教育論が交わされているのを見て、センターの歴史と担っている役割の大きさを感じた」等の声が聞かれた。

一覧に戻る