海外子女教育ニュース

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海外人事担当者セミナーを東京で開催(海外子女教育振興財団)(2017年9月号)2017.08.24

海外子女教育振興財団は7月5日に東京(東京都港区・真福寺)で、同財団の維持会員企業・団体の海外人事担当者等を対象に「グローバル企業の教育相談事例から」をテーマにしたセミナーを開催した。講師は、世界各地に多くの駐在員を派遣し、海外巡回による教育相談も積極的に行っている三菱商事株式会社とトヨタ自動車株式会社の各海外教育相談員。
本会は海外駐在員の派遣業務を担当している海外人事担当者に、海外での子どもの教育や駐在員家族への支援について理解を深めていただくことを目的とし、95社から112人の参加があった。
冒頭で、海外子女教育振興財団の中村雅治理事長があいさつに立ち、本会への参加および日ごろの支援に感謝した。さらに在留邦人子女の低年齢化傾向のほか、日本政府が打ち出している在外教育施設の教育強化や今後の教育改革等について触れ、「いま、教育から目が離せない。情報を発信して皆さんとコミュニケーションを取れるよう努めたい」と述べた。
続いて、三菱商事株式会社海外教育相談室長の友部政勝氏が「海外での子どもの教育について」と題した講演を行った。友部氏は1979年に茨城県で教職に就いて以来、カラチ日本人学校(パキスタン)で教諭を務めたほか、クイーンズランド補習授業校(オーストラリア)と台北日本人学校(台湾)で校長を歴任し、2013年から現職に就いている。
海外赴任が決定すると、期待が膨らむ一方で子どもの学校や生活環境が不安になるものだと赴任者の気持ちを整理し、親の心構えとして「子どもの安全第一」「笑顔で育てる余裕」「ポジティブシンキング」「意識して対話の時間を持つ」「基本的生活習慣の確立」「褒めることを多くする」「夫婦で事にあたる」「父親とのコミュニケーション」を挙げ、夫婦が協力し、同じ考えで子育てする大切さを訴えた。
また海外で選択できる在外教育施設を紹介し、それぞれの特徴や課題について説明するとともに、教育相談事例に触れながら家庭でできるフォローに関して説明した。たとえば、子どもを日本人学校に通わせる場合は現地ならではの体験をできるだけするよう心がけること、現地校やインターナショナルスクールに通わせる場合は日本語や日本の教科学習、風俗慣習を補充するほか、アイデンティティ等の精神面でのフォローも必要だと話した。
質疑応答では、「未就学児にはどのような支援をしているのか」「現地に日本人学校があるのに現地校やインターナショナルスクールを選ぶ場合、どの程度支援を行うべきか」「中三の子どもを連れていく場合はどう学校を選べばいいのか」「海外教育相談室の人員はどのような体制になっているのか」等の質問が上がった。
次に、トヨタ自動車株式会社人材開発部海外教育相談室カウンセラーの八神良夫氏が「トヨタ自動車における駐在員家族への具体的なフォローアップについて」と題して講演を行った。八神氏は1980年から愛知県で教諭・教頭・校長を歴任し、天津日本人学校(中国)で校長を務めたのち2013年に現職に就いた。
はじめに海外子女の人数の推移や就学状況、海外子女教育の現状について説明し、トヨタ自動車では海外勤務赴任者セミナーを通して家族の在り方を再考してもらい、受験に関する支援や個別相談、海外巡回指導を行うことで帯同するときの不安を払拭してもらっていると述べた。さらに、現地の教育事情を伝えるとともに母語の発達を踏まえた外国語の習得について説明したり、個別相談では帰国を見据えたスケジュール表を提供し、見通しを持てるようアドバイスしたりしているなどと具体例を示した。
また海外巡回教育相談での事例・アドバイスとして、「海外で幼児を育てるときの留意点」「一時帰国時の留意点」「帰国生入試の制度と準備」を挙げたほか、現地で視察してきた日本人学校や現地校、インターナショナルスクールについて、その特徴等を紹介した。
会場からは、「赴任する際、帰国のタイミングや、帰国後の赴任地は決まっているのか」「現地で通う学校関係の費用はどこまで会社が負担しているのか」「海外駐在で、赴任地等によって、家族帯同を認めないケースはあるのか」「会社に教育相談室がない場合はどうしたらいいのか、また、教育面の支援をする際にまずやれることは何か」「海外巡回相談は相談員がひとりで行くのか」等の質問があった。
参加者からは次のような感想が聞かれた。
「子どもの教育は家族の重要な案件。講演された2社共、社員とその家族をいかに大切にしているかが伝わってきた。そういうことが、駐在員のよい仕事に繋がっていくのだと感じた」
「海外駐在員家族のリアルな不安や実情、課題を知ることができたほか、家庭内での日本の教育、母語教育の重要性を理解できた。今後、社員に発信して浸透させていきたい」
「今後の日本の教育制度改革に合わせ、海外子女の教育についてもこれまで以上のサポートを行う必要があると思った。特に言語発達段階にある未就学児童に対して、配偶者も併せたケアやフォローが必要だと感じた」
「日本人学校のメリットをあらためて確認できた。最近、英語志向が強くインターナショナルスクールや現地校に通わせたがる傾向があるので、赴任者に対応するときに伝えていきたい」
「赴任前から帰国後までを見据えてフォローしている点に頭が下がった。特にスケジュール表は、なかなか対応できない部分ではあるが、赴任者の不安を取り除くための大きなツールになるということはたいへん参考になった」
「一時帰国中はたんなる休暇と考えていたが、子どもの『体験入学』など貴重な体験ができるチャンスであることがわかった」
「会社が仕方なくではなく、きちんとした意義を持って支援を行っていることに感銘を受けた」
「いまは手探り状態だが、まずはできることから始めてみようと思っている。具体的な取り組み内容が参考になった」
終了後は講師と名刺交換を行う来場者の姿が見られ、「あっという間の時間だった」という声も聞かれるなど、惜しまれつつの散会となった。

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