2022年度(令和4年度)事業報告
=公益目的事業1 海外・帰国子女に対する教育、海外勤務者及びその家族に対する研修、その他の支援=
=公益目的事業2 海外の日本人学校・補習授業校等に対する運営上及び教育上の支援=
=公益目的事業3 海外・帰国子女教育に係る教育相談・情報提供・広報・啓発及び調査・研究=
=附属明細書=
2022年度(令和4年度)収支決算
=公益目的事業1 海外・帰国子女に対する教育、海外勤務者及びその家族に対する研修、その他の支援=
- 通信教育(文部科学省補助事業)
帰国後の円滑な学習適応を目的として、義務教育年齢の海外子女を対象にした通信教育「小・中学生コース」を実施した(日本人学校・補習授業校に在籍していない受講生に要する経費に関しては文部科学省の補助がある)。国語はブック教材、算数/数学はインターネット教材の提供と添削指導を行い、理科・社会(小学3年生から中学3年生対象)ではインターネット教材を提供した。受講生数は次のとおりであった。
(単位:名)
受講生数 |
計 |
小学生 |
中学生 |
|
日本人学校 |
補習授業校 |
その他(補助対象) |
国語・算数/数学 |
1,960 |
1,532 |
428 |
|
163 |
717 |
1,080 |
理科・社会 |
1,185 |
797 |
388 |
|
95 |
485 |
605 |
実数 |
2,033 |
1,581 |
452 |
|
169 |
752 |
1,112 |
海外から送付された国語・算数/数学の添削問題解答用紙は合計8,703件(小学生7,287件、中学生1,416件)であり、この解答用紙に専門の添削指導者が添削を行い受講生に返送した。
- このほか、幼児対象の「幼児コース」(受講者数430名)を実施した(補助対象外)。
- また、海外滞在中の保護者を対象に『多文化の中での子育てで大切にしたいこと』と題し、米国スタンフォード・オンラインハイスクール校長の星友啓氏によるオンライン講演会を開催した(約1,450名申込)。
- 外国語保持教室
帰国子女が海外で身につけた語学力を保持するために、関東地区5か所、中部地区2か所、関西地区1か所及びオンラインコースで、英語及びフランス語の授業を開講。新型コロナウイルス感染症の影響を受けずに、全ての対面教室では各教室で授業を行うことができた。
- 外国語保持教室の地域別の受講生数は次のとおりであった。
(単位:名)
|
レギュラーコース等 |
サマースクール |
計 |
関 東 |
新宿西口・愛宕・横浜・
川崎・船橋 405
|
首都圏(1日コース) 62 |
467 |
オーストラリア・スタディツアー 中止 |
中 部 |
名古屋・豊田 214 |
名古屋 中止 |
214 |
関 西 |
大阪 85 |
大阪 中止 |
85 |
オンライン |
610 |
(半日コース) 81 |
691 |
計 |
1,314 |
143 |
1,457 |
イベントとしては、7月に維持会員企業の協力の下で会社見学会を、8月に国内外の小学校英語教師を対象としたCLIL手法を授業で実践したワークショップを、9月には海外留学セミナーを開催した。
- 講習会
海外赴任者やその帯同家族(配偶者及び子女)を対象に、出国前の不安を解消し、海外での生活を充実したものとするための講習会(「現地校入学のための親子教室」、「渡航前配偶者講座」、「赴任前子女教育セミナー」、「渡航前子ども英語教室」)を開講した。
|
開催回数 |
受講生数 |
現地校入学のための親子教室 |
東京8回・名古屋2回・大阪2回 |
108家族 |
渡航前配偶者講座
「海外生活準備コース」 |
東京6回 |
50名 |
同「英会話コース」 |
東京10回 |
45名 |
赴任前子女教育セミナー |
WEB32回 |
1,539名 |
渡航前子ども英語教室 |
東京7回 |
55名 |
- 教科書配付(文部科学省依頼事業)
保護者の海外赴任に伴って出国する義務教育年齢の子女に対して、財団窓口(東京・大阪)で日本の教科書を配付(または送付)するとともに、海外から在外公館経由での追加配付申請があった場合も送付した。配付総数は財団窓口配付(送付含)が62,755冊、在外追加配付が3,475冊、配付した児童生徒数は次のとおりであった。
(単位:名)
渡航後の就学予定先 |
日本人学校 |
補習授業校 |
その他 |
計 |
|
在外追加送付 |
小学生 |
3,928 |
1,757 |
720 |
6,405
|
|
353 |
中学生 |
551 |
255 |
127 |
933 |
|
85 |
計 |
4,479 |
2,012 |
847 |
7,338 |
|
438 |
=公益目的事業2 海外の日本人学校・補習授業校等に対する運営上及び教育上の支援=
- 教材整備(文部科学省補助事業)
日本人学校91校、補習授業校206校、私立在外教育施設2校の計299校に対して、日本国内の小・中学校の整備基準に準じて、国庫補助金(92百万円)を配分し教材・教具等を整備した。
- 教材斡旋
学校の依頼に応じて、学校独自の予算により整備する学校備品、教材・教具、文房具・消耗品類、教科書改訂に伴い必要となる教師用指導書のほか、ワーク・ドリル等の補助教材等を手配し送付した。日本人学校56校、補習授業校93校、私立在外教育施設1校、その他在外教育施設13校の計163校より、年間619件の斡旋依頼(取扱額118百万円)、195件の見積依頼があった。
- 保険斡旋
●文部科学省の依頼により政府派遣教師専用に創設した医療補償制度について、海外赴任する在外教育施設の政府派遣教師本人及びその帯同家族を対象に、医療費等に係る保険について財団が契約者となり、1,205家族2,504名の会費徴収等加入事務の取りまとめを行った。
- ●学校保険については、日本人学校41校、補習授業校12校の計53校に海外学校傷害保険、計2校に海外学校賠償責任保険、計7校に海外学校ボランティアサポート保険の仲介斡旋を行った。
- 安全対策援助等
在籍児童生徒の安全確保を目的として、援助申請35件のうち、広州日本人学校ほか19校、ダハラン補習授業校ほか11校の合計32校に対して11百万円の資金援助を行った。なお、本援助金には2021年に解散した(一社)海外邦人医療基金からの寄附金を昨年に引き続き充当した。また、ニューデリー日本人学校の緊急援助申請(洪水による被害)への見舞金1百万円にも同寄附金を充当し、資金援助の合計は12百万円となった。
- 運営支援
- ●教員確保(政府派遣教師を除く)について、ホーチミン日本人学校ほか30校に対して学校採用教員124名の雇用支援を、また、立教英国学院ほか22校に対して学校採用教員69名の雇用補助を行った。
- ●在外教育施設の教職員等に関する求人・求職情報の専用サイト「日本人学校等学校用教員雇用管理システム」上に在外教育施設による求職情報の掲載並びに登録者の閲覧機能を雇用補助のサービスとして提供した。
- ●ベルマーク教育助成財団ほか、10企業・団体の図書寄贈やコンクール後援、資料配付、広報等について側面から支援した。
- ●在外教育施設におけるICTの利活用や新型コロナウイルス感染症の再拡大によるオンライン授業の円滑な実施など、非常時でも途切れない教育体制を強化するため、高速無線LAN機器整備について日本人学校32校に対し42百万円を補助した。
- ●在外教育施設における新型コロナウイルス感染症に対する防疫体制を万全なものとし、児童生徒に安全な教育環境を保障するため、学校内で独自に実施した防疫対策及び換気対策設備費用について、日本人学校50校、補習授業校17校、私立在外教育施設1校に対し17百万円を補助した。
- ●財団が在外教育施設向けに提供しているサービスや情報を在外教育施設が利用できる「在外教育施設専用サイト」を運営した。
- ●日本人学校教師向けの研修会として「グローバル教師塾」、補習授業校教師向けの研修会等として「初任者研修会」、「授業研究会」等を開催、教師の授業実践力を高めるとともに、在外教育施設の教師同士のネットワーク構築を図った。さらに、選ばれる在外教育施設づくりを進めることを目的とした文部科学省委託事業「在外教育施設重点支援プラン」を受託、在外教育施設18校に対し外部有識者28名及び研究協力校3校・11機関と協働で次年度から本格的に始動する研究開発のための体制整備を行った。
- ●政府派遣教師による現地教育事情等や帰国後の教育実践報告、在外教育施設におけるICTを活用した教育実践事例289件を収集したほか、在外教育施設で働く教師の魅力や帰国教師の国内外における取組事例を紹介する動画等を作成した。さらに『今後の日本の教育とグローバル教師の役割』と題し、帰国教師によるオンラインパネルディスカッションを開催するとともに、国内外への情報提供を行った。
- ●未来世代のための新しい学びの場を提供することを目的としたイベントを開催。iPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥教授による『夢を叶える力』をテーマにした講演、「世界の人たちが健康で幸せに暮らすために、私たちができることを考えよう」をテーマに、自分の夢を通して世界の課題解決について考えるグループワーク、世界各地に住む仲間との交流を楽しむことを通して、「つながること」の重要性を再確認する機会となった交流会を行い、世界各地から在外教育施設の在籍児童生徒等1万名の参加を得た。
- 寄附金募集
特定公益増進法人に対する寄附金として、シンガポール日本人学校ほか4校に対する寄附金(特定寄附金)59百万円(80件)の受け入れを行った。
- コンクール
海外での日本語の学習を促すために、海外子女を対象とした文芸作品コンクール(第43回)を開催した。作文・詩・短歌・俳句の4部門において前回より5,066点増の23,881点の応募があった。各部門の優秀者には文部科学大臣賞、各協賛団体賞、海外子女教育振興財団会長賞等を、優れた作品が多数認められた学校(20校)には学校賞を授与した。
=公益目的事業3 海外・帰国子女教育に係る教育相談・情報提供・広報・啓発及び調査・研究=
- 教育相談
- 在外教育施設や帰国子女受入校での教育経験をもつ専門の教育アドバイザーによる教育相談を実施した(総相談件数1,584件)。
- 相談領域拡大を図るため大手塾・予備校・留学エージェントと業務提携し、「オンライン受験相談」や「留学相談」を実施すると共に、同大手塾が主催する帰国生向け学校説明会で3年ぶりに対面相談を行った。また、バルセロナ、メキシコ、ブエノスアイレスの各日本人学校の児童生徒、保護者、進路指導教員を結んでのオンライン巡回相談会の実施や、企業向けのセミナー、塾関係者との帰国後の学校選びに関する講演等を行った。その他、帰国子女受入校と協働で、北米4都市(シアトル、コロンバス、NY、NJ)の在外教育施設等を会場とした巡回相談会も行った。
- 情報サービス
海外赴任者やその家族をはじめ、海外進出企業・団体からの問い合わせに対して、必要なアドバイスや情報提供(赴任先の学校、入学手続き、帰国子女の受入校等)を窓口・電話・Eメール等で行った。新型コロナウイルス感染症の影響から休止していた財団窓口の業務を10月に再開。出国前の不安や心配を少しでも軽減していただく目的とした対話サービス(希望制)を始めた。
- 企業・団体会員等への支援
『維持会員企業・団体フォーラム2022〜未来を担う子どもたちを海外で育む〜』と題して、行政、企業海外人事、教育アドバイザーの立場より海外子女教育の現状や課題、支援体制等を説明するオンラインイベントを開催した(企業・団体会員114社150名申込)。また、昨年度に引き続き、「海外給与や福利厚生、海外勤務者規程作成、修正時の留意点について」と題したライブによるオンラインセミナーを開催した(企業・団体会員119社204名申込)。
- 帰国子女教育支援
●海外子女が帰国するにあたり、希望する学校の受入条件や状況が把握できる機会を設けることを目的として、帰国子女受入校による「学校説明会・相談会」をオンラインで開催した(参加校・団体等の数は147校・団体、参加人数は約3,300名)。
- ●帰国子女の受入校や帰国子女教育に積極的に関わる機関に対して支援を行うとともに、帰国子女教育に関する学校会員連絡協議会を大阪で開催、グループワークを通じて学校間の情報共有を行うとともに、帰国子女教育の振興を図った。
- 調査・研究等
●在外教育施設や帰国子女受入校を含め、海外・帰国子女教育に関する調査・分析や図書・資料等の収集を行った。
- ●日本人学校を対象に「オンライン指導等の実施状況調査」及び「デジタル教科書の利活用に関する実証的検証」を実施した。
- ●日本人学校を対象に「日本人学校における学校保健体制に係る状況調査」及び「日本人学校における特別支援教育に関する調査」を実施した。
- ●政府や議員連盟等に海外・帰国子女教育振興のための要望事項を伝えた。
- 刊行物・資料等配付
次の刊行物等を発行・頒布した。
- 機関誌『海外子女教育』(月刊・PDF版)
- 書籍『新・海外子女教育マニュアル』
- 書籍『帰国子女のための学校便覧』(年刊)
- 書籍『地球に学ぶ』(海外子女文芸作品コンクール作品集・年刊)
- 書籍『海外で暮らして〜体験したこと、学んだこと〜』(海外子女文芸作品コンクール35周年記念作文選集)
- 書籍『英語ナビ』
- 書籍『言葉と教育』
- 書籍『サバイバルイングリッシュ』
- 書籍『ぬりえ さばいばるいんぐりっしゅ』
- 書籍『新・私たちはいかにして英語を失うか』
- 出版物『インターナショナルスクールに通うということ』
- 出版物『日本人学校に通うということ』
- 出版物『母語を育てるということ』
- 出版物『海外子女教育手帳』
- パンフレット『母語の大切さをご存知ですか?』
- パンフレット『現地校入学のために −アメリカ編−』
- パンフレット『現地校入学のために −イギリス編−』
- パンフレット『帰国に向けて』
- パンフレット『お子さんの外国語保持のために』
- パンフレット『小さな子どもと送る海外生活』
- パンフレット『海外赴任前のご家族の生活準備教室』
- 日本人学校・補習授業校別パンフレット
- 物品『はんかち さばいばるいんぐりっしゅ』